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文献番号 2025WLJCC015
東京都立大学 名誉教授
前田 雅英
Ⅰ 本判例のポイント
特定抗争指定暴力団※2に指定されている組織の組長である被告人Yが、同居し事実婚の関係にある被告人X名義のETCカードを用いて、暴力団員であるYの配下の組員である被告人Zの運転の下、高速道路を頻繁に利用したこと(以下「本件各行為」という。)が、電子計算機使用詐欺罪に問われた事案である※3。本件ETCカードは、X名義のクレジットカードに付帯して(紐付けられて)発行されたものである。
本件の争点は、本件各行為が刑法246条の2の「虚偽の情報」を与える行為に該当するかにある。そして、大阪地裁は、電子計算機使用詐欺罪について、①XとYは同居の事実婚の夫婦であり、②ETCカード使用には本人確認措置がクレジットカードの場合ほど厳格ではなく、③本件のような事実婚の夫婦間での1枚のETCカードを貸し借りによって使用することを許容していないことの周知が十分になされていなかったので、被告人らは虚偽の情報を与えたということはできないなどとして無罪を言い渡した。ただ、同種事案について、大阪地判令和6年5月8日※4が懲役10月(執行猶予3年)を言い渡し、控訴審でも維持されていることもあり、無罪の理由を慎重に吟味する必要がある。
Ⅱ 電子計算機使用詐欺罪の公訴事実
被告人3名は、C高速道路株式会社が有料道路の料金所に設置したETCシステムを利用するに正当な使用権限を有する者が乗車する場合に有料道路の通行料金が割引されるETC利用割引の適用を不正に受けようと考え、共謀の上、X名義のETCカードを挿入したETC車載器を搭載した普通乗用自動車をZが運転し、Yが同乗して、(1)令和4年12月8日午後5時36分頃から同日午後5時53分頃までの間、M市の大阪府道高速線ランプから流入し、料金所を経由して、S市のランプから流出し、(2)同月15日午後3時22分頃から同日午後3時40分頃までの間、O市の高速料金所から流入し、M市の大阪府道高速ランプから流出するに際し、真実は、Xが乗車しておらず、X名義のETCカードの正当な使用権限がないのに、同ETCカードを挿入した同ETC車載器を作動させて、前記各料金所等に設置されたETCシステムの路側無線装置と同車載器との間で、同ETCカードに記録されたETCカード情報等を交信させ、C高速道路株式会社が管理するETCシステム利用による通行料金の記録、徴収等の事務処理に使用される電子計算機に対し、同ETCカードの正当な使用権限を有する者が同ETCカードを利用して前記各料金所等のETCレーンを通過したとの虚偽の情報を与え、財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、正規の通行料金との差額相当の財産上不法の利益をそれぞれ得たというものである。
Ⅲ 判旨「虚偽の情報を与えたといえるか」についての大阪地裁の判断
大阪地裁は、まず「ETCカードに関する各種規定上、自己名義のETCカードを他人に貸与等することは禁止されている」とした上で、本件各行為が電子計算機に虚偽の情報若しくは「虚偽の情報」を与える行為であるかを中心に検討する。
1.大阪地裁は、ETCカードの制度について、以下のように整理する。
(1)ETCシステムを利用しようとする者は、ETCカードを発行する者等の定める手続によりETCカードの貸与を受けることが必要となる。
(2)クレジットカードに付帯するETCカードの取扱いについては、当該クレジットカード会社の定める会員規約によることとされている。
(3)規則には、「ETCカードによる料金の支払いは、通行の都度、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限り行うことができ、カード名義人と異なる者が当該ETCカードを使用した場合」は、カードによる料金の支払いの取扱いを停止し、「利用者が正当に使用する権限を有していないETCカードを使用する行為により料金の全部又は一部を免れた場合は」、「当該通行又は利用を不正通行として取り扱う」との規定が示されている。
(4)本件ETCカードに関する規定である「ETCスルーカード規定」にも、「ETC会員は、他人に対し、本カードを貸与、預託、譲渡もしくは担保提供を一切してはなりません。」と明示し、「本カードは、本カード上に表示されたETC会員本人だけが使用できる」と定めている。
また、有料道路通行料金決済契約では、「ETC会員以外の者がETCカードを使用したと認められる場合(通行車両に当該会員が同乗している場合を除く。)」には、ETCカードによる支払いを拒絶した上で当該ETCカードを留置することができるとも規定されている。
大阪地裁は、これらを総合し、「ETCカードを利用する有料道路を管理し、利用料金を徴収する」者においては、「共通認識として、ETCカード名義人以外の者によるETCカードの使用を禁止しており、ここにいう使用とは、ETCカードの名義人が運転し、又は同乗することをいうものとしていたということができる」とし、「ETCカードの利用は、全て親カードの利用とみなされ、ETCカードの利用代金は親カードのカード利用代金と合算して支払われるものとされており」、「カード名義人の個別的な信用を基礎として貸与されるクレジットカードと同様の扱いとしているものと考えられる」と認定した。
2.その上で、弁護人の「ETCカード利用の際、料金の徴収のために必要なその通行に関する情報・・・・・・、あるいは、料金を納付しようとする者の識別その他料金の徴収に必要な情報で暗号化されたもの及びこれにより関連機器を正常に作動させるため必要な情報・・・・・・であるETCシステムに送信されるカードに関する情報としては、カードID等の情報に限られ、ETCカード名義人が同乗している事実、ETCカードの正当な使用権限があることはこれに含まれないから、虚偽の情報を与えたということはできない」との主張に関しては、取り分けクレジットカードに付帯されたETCカードの使用については、「クレジットカードがカード名義人の個別的な信用を基礎として信用を供与するものであることからすれば、ETCカードの使用に際しても、名義人本人と使用者との同一性が重視されるものというべきである。ETCシステムに送信されるカードに関する情報に、カード名義人と紐付く固有のカードIDが含まれているのも、そのためであるといえる。ETCシステム上、名義人本人による有効適切な使用か否かを判定して、正規の料金を徴収することが事務処理の目的となっており、基本的には名義人本人以外の使用は予定されていないと解される。」として退けたのである。
3.また、大阪地裁は、ETCカード名義人が車両に乗車しているかどうかの確認が行われていないのは、システムの利便性から必要があることによるもので、直ちにカード名義人本人以外の使用を一般に許容していることにはならないとしつつ、「ETCカードの名義人本人の使用であること(同乗を含む。)の確認が、クレジットカード使用の場合と同程度にはされていないことは、虚偽の情報を与えたか否かの判断に当たって、一定程度考慮すべき事情になると解される」とする。
4.そして、XとYは事実婚の夫婦関係にあり、Yの所属する暴力団が特定抗争指定暴力団に指定された令和2年1月以降、YはXと2人で外食等に出かけるなど、Zの運転の下、高速道路を頻繁に利用するようになったが、被告人3名はETCカードを所持していなかったため、Xは、令和2年2月、料金所での混雑を避けるため、自己のクレジットカードに紐付く本件ETCカードについて、自己の判断で発行手続を行い、カードの発行を受け、Yと専属運転手Zにカードを渡した。
ただ、Xが発行を受けたETCカードは、本件ETCカード1枚のみで、本件ETCカードは、Zの運転の下、Xの同乗していない状態で、YやXの子がそれぞれ乗車したり、送迎に向かう際にZが単独で乗車したりしている場合のほか、XとYが2人で乗車している場合や、Xのみが乗車している場合にも相当の頻度で利用されていた。捜査担当の警察官は、Y宅前に秘匿カメラを設置した捜査の結果、Yのみが乗車しているのが7割、Xも乗車しているのが3割であると証言するが、秘匿撮影した映像を消去したこともあり、被告人3名の各供述に合理的な疑いを入れるべき事情は存在しない。
5.本件ETCカードの利用は、Xも相当の頻度で利用していたことに照らし、基本的にY及びXが同居の事実婚の夫婦として同一生計の範囲内で営む消費生活の一部とみることができ、XのYに対する本件ETCカードの貸与は、そのような関係性のない第三者に対する貸与や、カード名義人が別途発行を受けたカードを包括的な許諾の下に渡した切りにする態様の貸与とは性質が異なるというべきであるとし、「本件各行為が、名義人本人に対する個別的な信用を基礎に信用を供与するクレジットカードシステムの趣旨に反すると直ちにはいえず、X自身の使用と同視する余地が十分にあるものであったということができる」とした。
そして、「本件各行為のようなETCカードの使用方法が禁止されていることについて、十分な注意喚起がされていなかったこと」は、「虚偽の情報を与えた」として当罰性のあるものということができるかをみるに当たって、十分に考慮されるべきであるとした。
6.ETCカードを取得できない暴力団員のYとZに利用させるため、Xが暴力団排除条項を潜脱する意図でカードを取得したと認めることもできないと認定した上で、大阪地裁は、最後に「名義人本人以外の者によるETCカードの利用が一般に禁止されていることを踏まえても、本件ETCカード名義人であるXと同人から使用の許諾を得たYとが生計を一にする同居の事実婚の夫婦であり、ETCカード使用の際には本人確認のための措置がクレジットカード使用の場合とは異なり厳格にはされていない状況の下で、C高速道路株式会社等が本件各行為のような生計を一にする同居の事実婚の夫婦間での1枚のETCカードの貸し借りによって使用することまで、不正通行に当たるとして許容していない旨の周知を十分にしていなかったなどの本件事実関係の下では、本件各行為が処罰に値するだけの虚偽の情報を与えたものということはできないと解される」と判示した。
Ⅳ コメント
1. 他人のカード利用と詐欺罪
他人名義のカードの使用に関しては、例えばクレジットカードの場合、加盟店において、名義人でない者が名義人になりすまし、商品等を購入する場合には詐欺罪に当たる。ただ本件のように、申込の受付から代金決済までが全て電子計算機により機械的に行われ、その過程に人が介在しない場合には、人を欺く行為やこれに基づく相手方の錯誤がないため、電子計算機使用詐欺罪の対象となる。
最二小決平成16年2月9日※5は、甲が不正に入手したV名義のクレジットカードを使用し、加盟店であるガソリンスタンドの従業員に対してV本人になりすまし、同カードの正当な利用権限や、カード利用代金を支払う意思・能力がないのにこれがあるように装い、カードを提示して給油を受けた行為は、甲がカードの名義人から使用を許されており、自らの使用に係る同カードの利用代金が名義人において決済されるものと誤信していたという事情があったとしても、詐欺罪が成立するとした。当該スタンドでは、名義人以外の者によるクレジットカードの利用行為には応じないこととなっており、代金が名義人によって決裁されるとしても、カード使用者がカード名義人本人であるかどうかは、重要な事実と解される。クレジットカードは、名義人本人でない者の利用を許してはならないという建前で運用されている。ただ、家庭内での同意を得た使用の場合等、詐欺罪を構成しない場合も考えられないことはない※6。本件も、事実婚の配偶者のETCカードを、同意を得て使用した事案の可罰性が問題となった。
2.虚偽の情報
電子計算機使用詐欺罪の第一の実行行為(行為態様)は、電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作ることである。虚偽の情報とは、電子計算機を使用する当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報をいう※7。虚偽とは、情報それ自体が虚偽でなければならないわけではなく、電磁的記録が不正に作出・改変された場合を含む※8。最三小判令和6年7月16日※9は、不正に入手した暗号資産NEMの秘密鍵で署名した上で、NEMの移転行為に係るトランザクション情報をNEMのネットに送信した行為が「虚偽の情報」を与えたものといえるとしている。
財産権の得喪・変更に係る電磁的記録とは、その作出(更新)により事実上財産権の得喪、変更が直接的に生じる電磁的記録を意味する。例えば、銀行のシステムに虚偽の振込送金情報を与えたり※10、信用金庫支店長が、入金事実がないのに預金係にオンラインの端末機を操作させ、預金入金があったとする情報を与えたり※11、プログラムを改変して預金を引き出しても残額が減少しないようにすることである※12。
3.大阪地判令和6年5月8日※13
虚偽の情報に関し、本件との関係では、大阪地判令和6年5月8日が、決定的に重要である※14。
事案は、暴力団員Wが、同居の兄弟UのETCカードが車載器に挿入されたQの運転する自動車に乗車して、H高速道路を2回利用したというもので、Uはカード使用を許諾し、Uの口座から利用料金が引き落とされていたが、上記利用時に同乗はしていなかった。H高速道路営業規則には「ETCカードによるH高速道路の料金の支払いは、通行の都度、クレジットカード会社から貸与を受けている本人が乗車する車両1台に限り行うことができます。」等の記載があり、ETCカードが紐付けられているクレジットカードのETC利用規定には「ETCカードは、ETCカード上に表示された会員本人のみが利用することができます。」等の記載があった。
この事案に関し、大阪地判令和6年5月8日は「ETCカードを使用する有料道路を管理し、利用料金を徴収するH高速社及び本件ETCカードの発行元であるEファイナンスのいずれも、本件ETCカードをカード名義人以外の者が使用することを禁止していることは明らかである。このように定められているのは、本件ETCカードが主たるカードであるクレジットカードの決済機能を利用するものである以上・・・・・・、本件ETCカードもクレジットカードと同様に、カード名義人の個別的な信用を基礎として貸与されていることによるものと考えられる」とし、ETCシステムにおいては、クレジットカードに付帯するETCカードを使用する場合には、所定の審査を経てクレジットカードの発行を受け、ETCカードの貸与を受けた者との間でのみ電子決済をすることが重要な前提とされているので、「カード名義人であるUが同乗していないのに、W及びQが本件ETCカードを使用したことは、ETCシステムで予定されている事務処理の目的に照らして真実に反するから、『虚偽の情報』を与えたといえる」と判示し、Wらに対して、通常料金とETC料金との差額に関する電子計算機使用詐欺罪の共同正犯の成立を認めた。
弁護側の「虚偽の情報」は「判断の基礎となる重要な事項」でなければならず、「通過車両内にETCカード名義人が乗車している」との事情は「重要な事項ではない」との主張も、高速道路運営会社等にとって、カード名義人の乗車を要求することは、ETCシステムの前提になっているとみることができるとしたのである。
4.大阪地判令和7年1月14日※15が無罪とした理由
大阪地判令和7年1月14日も、ETCカード名義人が同乗している事実やETCカードの正当な使用権限があることは「ETCシステムに送信されるカードに関する情報」に含まれないから、虚偽の情報を与えたといえるかの判断には影響しないとする弁護人の主張を退け、ETCカードの使用に際しても、名義人本人と使用者との同一性が重視されるものというべきであると判示した。その意味では、同様の主張をした大阪地判令和6年5月8日の結論に批判的な評釈※16にも与しないものといえよう。
ただその上で、ETCカードの名義人本人性の確認が、クレジットカード使用の場合と同程度にはされていないことは(直ちにカード名義人本人以外の使用を一般に許容していることにはならないとしつつ)、虚偽の情報を与えたか否かの判断に当たって、一定程度考慮すべき事情になると解されるとしたのである。
ここには、暴力団排除の周知や確認が十分でないとして詐欺罪の成立を否定した最二小判平成26年3月28日※17等の影響もみられるように思われる。ただ、「情報の虚偽性」の判断において「本人以外の使用の禁止の周知の程度」が影響するのも当然である。
問題は「十分でない」ということの程度であり、それによって「情報の虚偽性」の結論を導き得るかにある。周知の程度・方法は、関連企業も含め、経済的・技術的な視点も入れて総合的に判断されなければならない。そして、本判決も、虚偽の情報を与えたか否かの判断に当たって、「一定程度考慮すべき事情になるとする」に止めているのである。
構成要件該当性を否定する論拠として重要なのは、YやZのみのカード利用運行であっても、カードの名義人であるX自身の使用と同視する余地が十分にあるとした点なのである。その根拠としては、①カード運行は、Xの同乗していた割合が高いこと、②XのYに対するETCカードの貸与は、事実婚の夫婦として同一生計の範囲内で営む消費生活の一部とみることができること(親子間でのクレジットカードの貸与問題については5.で後述する)、③名義人本人に対する個別的な信用を基礎に信用を供与するクレジットカードシステムの趣旨に反すると直ちにはいえず、④本件のようなカード貸与禁止の周知が不十分であったこと(本人確認が厳密ではないことと連続的であるが)が挙げられる。
しかし、①~④の事情だけでは、「乗車していなかったXが運行した」と解することはできない。特に④については、弁護人ら指摘のように、広報活動が十分ではないとの評価もあり得ないことはないが、その点について高速道路会社が「関心を持っていなかった」とか、「黙認していた」とはいえない。そして、裏面にはETCカードの利用を本人に限定する旨の記載がされているのであるから、名義人以外の者による使用が禁じられていることはむしろ分かりやすく示されているといえよう。
5.身内のカード利用と特定抗争暴力団
前述のように、家庭内で親の同意を得た家族によるカード使用の買い物等の場合等、全て詐欺で立件することも、刑事政策的には、不合理な場合も考えられる※18。そこで、本判決の「虚偽の情報の限定・縮小解釈」も、実質的構成要件解釈として、許されるようにみえる。
しかし、当罰性の判断の視点からは、本件事案で最も核心的な部分は、Yが、ETCカードを持つことのできない特定抗争指定暴力団の組長であるということである。財産犯であることを前提にしても、虚偽性の判断には、現行の法規範全体の中での規範評価が重要な位置を占める。
本判決は、Xが、暴力団排除条項を潜脱する意図で本件ETCカードを取得したものではなく、取得後の利用実態を踏まえても、暴力団排除条項の潜脱を専ら意図した使用がされてきたとまでは評価できないと強調する。確かにその認定は妥当であろう。しかし、専ら潜脱を意図した場合のみが「虚偽」になるわけではない。一定期間以上、組長と事実婚の関係にあるXは、「暴排」の意味は分かっているはずで、X自身の車による外出も、組員Zが運転している。そして本判決も「Yの供述によれば、暴力団の組事がある愛知県や三重県の方面に行く場合にはXが同乗していなかった」と認定している。そこで「Xが同乗しないまま本件ETCカードが使用された日が一定数ある可能性は否定できない」とも認定している。しかし、「3名の高速道路利用全体との関係で、その頻度が特に高いものとは評価できない」として、処罰に値するだけの虚偽の情報を与えたものということはできないとしたのである。ただ、捜査機関は「Yのみの乗車が7割であった」とする。秘匿撮影の関係で映像が消去され、証拠に基づくものでなく、立証されたわけではないが、組長を、頻度が特に高いものとはいえないにせよ、組員が運転して組関係の行事に運んでいたのである。少なくとも、判例の基準では、その事実を知れば、「利益を処分しなかった」ことになるとされる確率が高い。Xが同乗していなかったことが明白な本件事案については、電子計算機使用詐欺罪が成立すると解すべきだと考える。
(掲載日 2025年6月10日)