判例コラム

便利なオンライン契約
人気オプションを集めたオンライン・ショップ専用商品満載 ECサイトはこちら


2026 | 2025 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 | 2013
 

第123号 第一デンソー事件の最高裁判決 

~最高裁第三小法廷平成29年10月24日判決※1

文献番号 2017WLJCC031 関西大学会計専門職大学院 教授 中村 繁隆

1.はじめに

本コラム114号において第二デンソー事件の第一審※2を紹介した際、「第一デンソー事件 ※3の上告審の判断が待たれる」とコメントしたが、その約2ヶ月後の平成29年10月24日、第一デンソー事件の最高裁判決(以下、本判決)に接した。第一デンソー事件の本判決では、国側が勝訴した控訴審の判決は破棄され、デンソーの逆転勝訴となった。本コラムでは、第一デンソー事件の概要を紹介した後、主たる争点に関して控訴審判決が破棄された理由などについて若干の考察を行ってみたい。

2. 事実の概要

 本件は、内国法人である株式会社デンソー(以下、原告)が、平成20年3月期及び平成21年3月期の法人税の確定申告をしたところ、処分行政庁から、租税特別措置法66条の6(タックスヘイブン対策税制。なお、平成21年法律第13号による改正前のもの。以下、2において措置法)第1項により、シンガポール共和国において設立された原告の子会社であるA社の課税対象留保金額に相当する金額が原告の本件各事業年度の所得金額の計算上益金の額に算入されるなどとして、法人税の再更正処分等を受けたため、これらの処分の取消しを求める事案である。本件の主たる争点は、措置法66条の6第1項の適用の有無であり、A社の主たる事業(措置法66条の6第3項括弧書き)が「株式の保有」事業(以下、株式保有業)であるか否かである。 第一審は、A社の「主たる事業」について、「特定外国子会社等の当該事業年度における事業活動の具体的かつ客観的な内容から判定するほかないのであって、特定外国子会社等が複数の事業を営んでいるときは、そのいずれが主たる事業であるかに関しては、当該外国子会社等におけるそれぞれの事業活動によって得られた収入金額又は所得金額、それぞれの事業活動に要する使用人の数、事務所、店舗、工場その他の固定施設の状況等の具体的かつ客観的な事業活動の内容を総合的に勘案して判定するのが相当である」とした上で、A社の「主たる事業」は、地域統括事業(地域企画、調達、財務、材料技術、人事、情報システム、物流改善等に係る地域統括業務を行うこと)であると判示した。 一方、控訴審は、「事業としての「株式の保有」とは、単に株式を保有し続けることのみならず、当該株式発行会社を支配しかつ管理するための業務もまた、その事業の一部をなすというべきであり、本件で問題となっている一定地域内にある被支配会社を統括するための諸業務もまた、株式保有業の一部をなし措置法66条の6第3項括弧書きの「事業」に該当することは明らかである」と述べ、A社の「主たる事業」は、株式保有業であると判示した。

3.主たる争点に対する最高裁の判断

 最高裁は、以下の3点から、A社の「主たる事業」を地域統括事業と判示した。 (1)A社は、「株主権の行使や株式の運用に関連する業務等とは異なる独自の目的、内容、機能等を有するものというべきであって」、A社の「業務が株式の保有に係る事業に包含されその一部を構成すると解するのは相当ではない」。 (2)A社の「行っていた地域統括業務は、地域経済圏の存在を踏まえて域内グループ会社の業務の合理化、効率化を目的とするものであって、当該地域において事業活動をする積極的な経済合理性を有することが否定できない」。 (3)平成22年法律第6号による改正後の措置法66条の6第3項に関する「改正経過を根拠に…(A社。筆者注)の統括業務が株式の保有に係る事業に包含される関係にあるものということはでき」ない。

4. 控訴審の判決が破棄された理由について

 株式保有業の意義に関する控訴審の判決が破棄された理由は、上記3のとおり3点である。しかし、本コラム114号の4.3で、「平成22年改正措置法の考え方は、限定された統括会社の統括業務を株式保有業から除外しているだけであるから、地域統括業務は措置法66条の6第3項にいう株式保有業との関係において、その一部を構成していない場合も存することになる ※4。すると、これは、上述した控訴審の「その後の法改正によっても裏付けられる」という部分と齟齬をきたすことになろう」とコメントしたとおり、私見としては、上記(3)が控訴審の判決の破棄理由の一番ではないかと考えている ※5 。また、上記(3)の判断を示す部分において、平成22年改正後の措置法66条の6第3項によって、「事業基準を満たすこととなる統括会社は、もともと株式等の保有を主たる事業とするものであって(同項柱書き)、それ以外の統括会社はその対象となるものではない」として、上記のコメントと同じ内容が明確に述べられている点も、上記(3)が控訴審の破棄理由の一番ではないかと考える根拠である。

5. おわりに

 本判決に関して、大野雅人教授が「企業の海外進出が広がるなか、最高裁が基準を示したことは意義がある※6 」と評価する点については、私も同意見である。なお、実務サイドからも本判決に対し、肯定的な評価が上がっている模様である※7。 最後に、第二デンソー事件については、第一審に引き続き、控訴審※8 においても「主たる事業」は株式保有業ではなく、地域統括事業であるとされた。  

(掲載日 2017年12月11日)

Westlaw Japan製品の関連文献・法令リンクについてはページ上部からダウンロードいただけるPDF内でご確認いただけます。
  • ウエストロー・ジャパン文献番号2017WLJPCA10249001。
  • ウエストロー・ジャパン文献番号2017WLJPCA01266005。
  • 第一審(名古屋地裁平成26年9月4日判決)は、税務訴訟資料 264順号12524、訟務月報62巻11号1968頁、 ウエストロー・ジャパン文献番号2014WLJPCA09046005。控訴審(名古屋高裁平成28年2月10日判決)は、訟務月報62巻11号1943頁、 ウエストロー・ジャパン文献番号2016WLJPCA02106001。
  • 判例コラム114号では、西中間浩弁護士の評釈のみ紹介したが、同様の指摘を行っているものとして、大野雅人「外国子会社合算税制において地域統括会社の主たる事業が「株式保有業」に当たるとされた事例」ジュリスト1510号136頁(2017)も参照。
  • 同じ見解と思われるものとして、吉村政穂「外国子会社合算税制における適用除外要件の適否-デンソー事件」ジュリスト1510号11頁(2017)では、「名古屋高裁の判断がいかなる解釈技法に基づくものかは些か分明でないが、平成22年度税制改正の存在を重視した判断であったと思われる」との記載がある。なお、異なる見解と思われるものとして、佐藤修二「租税訴訟と最高裁-デンソー事件最高裁判決に接して」NBL1109号20頁(2017)では、「本件もまたそうであるように、改正の経緯も含めた法令の文理や法体系の整合性を重視しつつも、特に納税者の目から見て不当と思われる結論を招きかねない場合については、法の趣旨も踏まえた柔軟な解釈をいとわない姿勢も垣間見られる」との記載がある。
  • 日本経済新聞2017年10月25日42面参照。
  • 佐藤・前掲注5・20頁の他、「(商事法務トピック)デンソー法人税更正処分取消し最高裁判決」商事法務2150号41頁(2017)では、「最高裁判決は、控訴審判決に対する実務の懸念に応えたものであり、積極的に評価されるべきであろう」との記載がある。
  • ウエストロー・ジャパン文献番号2017WLJPCA10186001。

» 判例コラムアーカイブ一覧