第21号 【2026年10月施行】できていますか?就活セクハラ対策義務化対応
文献番号 2026WLJLG009
Westlaw Japan コンテンツ編集部
Ⅰ 概要
1.はじめに
に公布された 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号) は、その大部分が、に施行されます。この法律は、多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るため、①ハラスメント対策の強化、②女性活躍の推進、③治療と仕事の両立を支援するための必要な措置を講じることを事業主の努力義務とするなどの措置を講ずるため、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」とします。)、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「男女雇用機会均等法」とします。)、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(以下「女性活躍推進法」とします。なお、同法は2026年3月末に失効予定でしたが、本改正により有効期限が2036年3月末までに延長されました。)等を改正するものです。
このうち、企業に対応が求められるハラスメント対策の強化に関するトピックは大きく2つあり、1つ目が、以前の法令ガイド第11号(文献番号2025WLJLG007)でも取り上げたカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化であり、もう1つが求職活動等におけるセクシュアルハラスメント(以下「就活セクハラ」といいます。)対策の義務化です。この記事では、就活セクハラ対策の義務化について、改めて概説していきます。
※以下では、改正後の法令を単に「○○法」と呼びます。
2.就活セクハラ対策義務化の概要
本改正により、企業等は、就活セクハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じる法的義務が課されました。これに伴い企業等が講ずべき具体的な施策等につき、 「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省ウェブサイト。以下、単に「指針」とします。)が定められています。以下では、この改正内容及び企業が取るべき対応について簡単に説明していきます。
(1)就活セクハラとは?
本改正により企業等に対策義務が課された「就活セクハラ」とは、「①求職者等による②求職活動等において行われる③当該事業主が雇用する労働者による④性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されるもの」です(男女雇用機会均等法13条1項)。
| 用語 | 内容 | コメント |
|---|---|---|
| ①求職者等 | 求職者+求職者に類する者として厚生労働省令で定める者 | 就職活動中の学生の他、インターンシップ生、教育・看護実習生等も含まれます(男女雇用機会均等法施行規則2条の3参照)。 |
| ①求職活動等 | 求職活動その他求職者等の職業の選択に資する活動 | 就活における面接や説明会への参加等がわかりやすいでしょう。それ以外にも、求職のためのOB/OG訪問や、インターンシップの参加、教育実習等の実習の受講等も含まれると考えられます(指針2(2)参照)。 |
| ③労働者 | 事業主が雇用する労働者 | いわゆる正規雇用労働者だけでなく、パート労働者や契約社員等も含む労働者の全てをいいます(指針2(3)参照)。 |
| ④性的な言動 | 性的な内容の発言及び性的な行動 | 性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、及びわいせつな図画を配布すること等が該当すると考えられます(指針2(4)参照)。 |
企業等は、このような労働者の言動により、求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、雇用管理上必要な措置を講じることが必要です。
なお、指針は、就活セクハラには、同性に対するものも含まれ、被害を受けた者の性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、指針の対象となるとしています(指針2(1))。
(2)主な義務等の内容
今回の改正では、就活セクハラの防止に関して、事業主(企業等)及び労働者の義務等が明確化されました。それぞれの義務等の概要は以下の表のとおりです。
| 対象者 | 主な内容(対象者がすべきこと等) | 主な関連条文(男女雇用機会均等法) |
|---|---|---|
| 事業主等 |
【就活セクハラ対策義務】
|
13条1項 |
【労働者に対する不利益な取扱い等の禁止】
|
13条2項 | |
|
14条2項 | |
|
14条3項 | |
| 労働者 |
|
14条4項 |
| 国 |
厚生労働大臣は、事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定める。 →事業主は、就活セクハラ対策につき、当該指針に沿った対応を取ることが求められる。 |
13条3項 |
| 国は、セクハラ問題に係る広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努める。 | 14条1項 |
その他、企業等が職場において選任することが努力義務とされている「男女雇用機会均等推進者」(男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者。詳細は、 「男女雇用機会均等推進者選任について」(厚生労働省ウェブサイト)等参照。)の業務に、就活セクハラにつき事業主の講ずる雇用管理上必要な措置等が加わりました(男女雇用機会均等法19条)。
(3)企業等に求められる対応
企業等が就活セクハラにつき講ずべき「雇用管理上必要な措置」に関する具体的内容等は、「指針」で示されており、大要、以下の事項を軸とする措置が必要とされます。
| ①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発 |
|
| ②相談体制の整備・周知 |
|
| ③就活セクハラ発生等の後の迅速かつ適切な対応 |
|
| ④①~③と併せて講ずべき措置 |
|
指針では、このような措置に加え、求職活動等を行う大学生等が所属する教育機関が設置する相談窓口の担当者等の求職者等の関係者から就活セクハラに係る相談に関する情報提供があった場合には、連携し、適切な対応を行うことが望ましいとしています。また、求職者等から、顧客・取引先等による就活セクハラに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、上記の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいとしています。
また、指針は、今回対策が義務化された就活セクハラ以外にも、求職活動等におけるパワーハラスメントに類する行為、求職活動等における妊娠、出産等に関するハラスメントに類する行為及び求職活動等における育児休業等に関するハラスメントに類する行為について、事業主は、事業主(法人の場合は役員)自らと労働者の求職者等に対する言動について必要な注意を払うよう努めるとともに、就活セクハラ同様の方針を併せて示すことが望ましいなどともしています。
今回対策が義務化された就活セクハラや上記のような求職者等に対するパワハラに類する行為等も含めた「就活ハラスメント」は、立場の弱い学生等の尊厳や人格を不当に傷つけるなどの人権に関わる許されない行為です。企業にとっても、いったん就活ハラスメントが起きれば、「就活ハラスメントを起こした会社」として、社会的信⽤を失い、イメージが低下し、ひいては、貴重な人材の退職・流出等のリスクが生じる重大な問題であり、本改正への対応ということにとどまらない実質的な対応が急務と思われます。就活ハラスメントに対する実質的で具体的な対策方法については、本ガイド最後尾のリンク集もご参照ください。企業向けに、就活セクハラにとどまらず、「就活ハラスメント」対策を実際に行ってきた企業の取組事例等も紹介されており、参考になるでしょう。
(4)プラチナえるぼし認定要件(就活セクハラ対策措置の内容の公表)の追加
女性の活躍に関する状況が優良な企業の中でも特に優良と認められた企業に与えられるプラチナえるぼし認定の要件に、事業主が講じている求職者等に対するセクハラ防止に係る措置の内容を「女性の活躍推進企業データベース」(厚生労働省ウェブサイト)に公表していることが追加されました(女性活躍推進法12条、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令9条の3第1項1号ニ)。現在、プラチナえるぼし認定を受けている企業も、認定を維持するために、2026年10月1日から概ね3か月以内に、講じている就活セクハラ防止に係る措置の内容を公表することが必要となります(詳細は、「状況把握、情報公表、認定基準等における解釈事項について」(厚生労働省ウェブサイト)の問45、問46等がわかりやすいでしょう)。
3.まとめ
本改正のうち、「就活セクハラ対策義務化」に焦点を当てて、その概要を説明してきました。本改正により、企業は就活セクハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが法的に義務付けられました。具体的な措置については指針に基づいて行うこととなります。この義務に違反したとしても、直ちに刑事罰の対象となるものではありませんが、調査・報告徴収・助言・指導の対象になり得、勧告に従わない場合には、その旨が公表される可能性があります(男女雇用機会均等法34条~36条)し、報告徴収に対する虚偽報告等は過料20万円以下に処される可能性があります(同法39条)。また、指針に沿った対応を行わないことは、民事上の裁判となった場合に、企業の「安全配慮義務違反」等を基礎付け、企業に不利に働くでしょう。
義務違反をした企業は公表されるおそれがあることから、本改正に対応することは、法に定められた義務を遵守するという観点のみならず、企業の社会的信用を保護するという観点からも非常に重要です。また、就活セクハラ対策をはじめとする就活ハラスメント対策を適切に行っているという事実は、企業に対する求職者等のイメージを向上させる手段の1つともいえるでしょう。そのため、いずれの企業においても、本改正により義務化された就活セクハラ対策を講じることが重要となり、本改正を機に、より積極的に、就活ハラスメント防止対策を行うことが望ましいでしょう。
Ⅱ チェックリスト
1.事業主が雇用管理上講ずべき措置
(1)方針等の明確化(就業規則の改定等)及びその周知・啓発
(2)相談体制の整備
(3)発生時の対応
就活セクハラが疑われる事態が生じたときには、以下の対応が求められます。そこで、事前に、下記の⇒以降の措置をとっておくと良いでしょう。
(4)(1)~(3)と併せて取るべき措置
2.プラチナえるぼし認定企業(予定企業も含む)が追加ですべきこと
3.最新情報に着目
企業が対応しなければならない法改正等は数多くなされています。このような法改正に対応するためには、まず、最新情報に触れることが重要です。最新の法令情報等を把握し、折よく対応していくために、Westlaw Japanがおすすめです。
(掲載日:)
*この記事は作成時点での情報を基に作成されています。