第18号 【2026年施行】資金決済法改正の概要と実務上のポイント
文献番号 2026WLJLG006
Westlaw Japan コンテンツ編集部
Ⅰ 概要
1.クロスボーダー収納代行への資金移動業規制の適用(令和7年法律第66号による改正後の資金決済に関する法律(以下「資金決済法」、同改正後のものを「改正後資金決済法」とします。)2条の2)
(1)改正の概要(図1)
これまで収納代行(債権者からの委託を受けて、債務者から資金の受領を行うサービスをいいます。)は、資金の受取人に代わって支払人から資金を受領し引き渡す行為であり、為替取引には該当せず、資金移動業の登録なしで行えるものと考えられてきました。
しかし、海外通販サイトへの支払やインバウンド旅行者からの支払等、国境を跨ぐ「クロスボーダー収納代行」については、マネー・ローンダリングやテロ資金供与、利用者保護上のリスクが高いとして、原則として資金移動業の規制対象(為替取引)に含まれることとなりました。オンラインカジノや出資金詐欺等の違法な送金行為を行う者は、無登録業者として取締りの対象となります。
ただし、リスクが低いと考えられる次の取引については、内閣府令等により規制対象外となる予定です。
- ① プラットフォーマー等が取引成立に関与する場合
- ② エスクローサービス(顧客のために一時的に資金を預かり、顧客の商品受領後に送金するサービス)
- ③ 資本関係があるなど、受取人との経済的一体性が認められる者が収納代行を行う場合
- ④ 他法令で規律されている場合

(2)実務上の注意点
a 自社決済スキームの適法性確認
海外企業に対する支払や、海外顧客(インバウンドを含みます。)からの代金受領において、自社で収納代行スキームを構築・提供している場合、新たに資金移動業の登録が必要になる可能性があります。対象外となる要件を満たしているか、法務・コンプライアンス部門等での精査が必要です。
b 委託先・提携先業者のチェック
海外送金等に際して外部の収納代行業者を利用している場合、その業者が適切に資金移動業の登録を受けているか確認することが求められます。
2.資金移動業者の破綻時における資金返還方法の多様化(改正後資金決済法45条の3、45条の4、45条の5等)
(1)改正の概要(図2)
資金移動業者が利用者から受け入れた資金の保全について、これまでは業者が破綻した場合、必ず供託手続を経由して国から各利用者に返還される仕組みであったため、返還までに長期間(最低170日)を要していました。本改正により、既存の供託を経由する手続(図2①②③)に加え、銀行等の保証機関(図2④)や信託会社等(図2⑤)から利用者に直接返還する方法が新たに認められ、迅速な資金返還が可能となりました。

(2)実務上の注意点
企業が経費精算や送金、あるいは賃金のデジタル払等で資金移動業者を利用する場合、業者の破綻リスクに対する安全性が高まります。外部業者を選定する際、この「直接返還スキーム(銀行等による保証や信託等)」を導入している業者であるかを評価基準に組み込むことで、自社の資金や従業員の賃金保全に関するリスクマネジメントを強化できます。
3.暗号資産・ステーブルコイン関連の新たなビジネス機会
(1)改正の概要(図3)
a 仲介業の創設(改正後資金決済法2条18項、63条の22の2等)
暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者と利用者を引き合わせる(媒介する)行為のみを行う「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」が新設(登録制)されました。新たな仲介業は、電子決済手段(ステーブルコイン)も対象とされます。
電子決済手段・暗号資産サービス仲介業は、特定の業者に所属する「所属制」がとられ(改正後資金決済法63条の22の3第1項7号等)、利用者資産を預からないため財務要件は課されず(改正後資金決済法63条の22の5、63条の22の13)、マネー・ローンダリング規制も所属業者が担うため仲介業者には直接課されません。
また、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業に対しては、利用者への説明義務や広告規制について、暗号資産交換業者等と同様の規制が設けられました(改正後資金決済法63条の22の12、63条の22の15)。
| 特徴 | 暗号資産等仲介業 |
|---|---|
| 参入方式 | 登録 |
| 所属制 | ○ |
| 説明義務 | ○ |
| 財務要件 | × |
b ステーブルコイン裏付資産の運用柔軟化(改正後資金決済法2条9項)
信託型ステーブルコイン(特定信託受益権)の裏付け資産について、これまでは全額を要求払預貯金で管理する必要がありましたが、国際的な動向を踏まえ、発行額の50%を上限として、元本を毀損しない形で、①満期・残存期間3か月以内の日米国債や、②中途解約が認められる定期預金による管理・運用が認められました。
具体的には、内閣府令において、①については、裏付け資産が減少した場合に委託者(電子決済手段等取引業者等)が追加拠出する義務を課すこと、②については、例えば、中途解約の場合も解約手数料により裏付け資産が減少しない場合に限定することが予定されています。

(2)実務上の注意点
a 新規事業参入のハードル低下
これまでは暗号資産やステーブルコインの取引を顧客に案内・媒介するだけでも、自ら交換業等の登録を受け、重い財務規制やマネー・ローンダリング対策を負う必要がありました。仲介業の創設により、中堅企業等でも新たなFinTechサービスやWeb3関連ビジネスとして、決済・暗号資産の仲介ビジネスへ参入しやすくなります。
b BtoB決済におけるステーブルコインの普及可能性
裏付け資産の運用が柔軟化されることで、発行者の収益性が向上し、ステーブルコインの発行・流通が活性化することが見込まれます。企業間のクロスボーダー決済等において、より安価で迅速な決済手段としてステーブルコインを活用する機会が増える可能性があるため、最新の決済トレンドを注視することが重要です。
4.暗号資産交換業者等に対する資産の国内保有命令の導入
暗号資産の現物のみを取り扱う事業者が破綻した場合、改正前の資金決済法においては、資産の国内保有命令の規定が存在しないため、資産の国外流出を防止できませんでした。
そこで、暗号資産デリバティブを取り扱わず、暗号資産の現物のみを取り扱う事業者の資産が国外に流出するおそれがある場合に資産の国内保有命令を発出できる規定を、改正後資金決済法に導入しました。
これにより、資産の国外流出を防止することが可能になりました(改正後資金決済法63条の16の2)。電子決済手段等取引業者(ステーブルコイン(電子決済手段)を取り扱う業者)についても同様の規定が導入されます(改正後資金決済法62条の21の2)。
5.施行日の整理
これまで解説した各改正項目は、全て2026年6月12日に施行されました。
一方、新たに資金移動業の登録対象(為替取引)となるクロスボーダー収納代行に関しては、実務への影響を考慮した次の経過措置が設けられています。
(1)施行日から6か月間の猶予
改正法の施行の際、現に新たに為替取引に該当するクロスボーダー収納代行を業として営んでいる事業者は、施行日から6か月間は、資金移動業の登録を受けずに引き続き当該業務を営むことが認められます。
(2)登録申請中の継続営業
上記の6か月が経過する日までに資金移動業の登録申請を行った事業者については、登録または登録拒否の処分がなされるまでの間も、引き続き業務を行うことができます(ただし、施行日から最大2年間が限度とされています)。
Ⅱ チェックリスト
1.クロスボーダー収納代行に関する確認(自社及び委託先)
(1)自社決済スキームの適法性の精査
*新たに資金移動業の登録が必要になる可能性があります。
(2)委託先・提携先業者の適法性の確認
2.資金移動業者の選定基準の見直し(リスクマネジメントの強化)
3.新たなビジネス機会と決済手段の検討
(1)「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」への参入検討
*特定の業者に所属する「所属制」の仲介業が新設され、財務要件やマネー・ローンダリング規制を自ら負うことなく参入が可能になります。
(2)BtoB決済等におけるステーブルコイン活用の検討
*ステーブルコインの裏付け資産の運用が柔軟化(発行額の50%を上限とした日米国債や定期預金による運用等)されることで流通の活性化が見込まれます。
4.最新情報に着目
企業が対応しなければならない法改正等は数多くなされています。このような法改正に対応するためには、まず、最新情報に触れることが重要です。最新ニュースや法令の情報等を把握し、折よく対応していくために、Westlaw Japanがおすすめです。
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(掲載日:)
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