法令ガイド

 

第12号 【2026年1月施行間近!】準備できていますか?下請法改正

文献番号 2025WLJLG008
Westlaw Japan コンテンツ編集部

Ⅰ 概要

1.はじめに

 2025年5月23日に、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律(令和7年法律第41号)が公布され、2026年1月1日より施行されます。同改正法は、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」とします。)等を改正するもので、同法に関しては、後述のとおり、題名改正もなされました(以下、改正後同法を「取適法」とします。)。
 この記事では、遵守しないと刑事罰を受ける場合(例:発注内容等の書面等による明示義務違反)もあり、対応が急務であると考えられる取適法に的を絞って、改正の概要を説明するとともに、特に、発注者側が注意すべき点につき、チェックリスト形式で説明していきます。

2.下請法改正の全体像

 本改正は、近年の急激な労務費等の上昇を受け、発注者・受注者の対等な関係に基づき、サプライチェーン全体で、適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図っていくことが重要であることから、主に、①規制(取適法適用)対象の追加、②規制内容の追加(禁止行為の追加)、③面的執行の強化(関係行政機関による指導等に係る規定を新設等)の3つの観点から、下請法を改正するものです。
 また、下請法に関する法題名や用語につき、下表のように変更されました。

改正前 改正後
下請代金支払遅延等防止法(略称:下請法) 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称:中小受託取引適正化法、取適法)
下請代金 製造委託等代金
親事業者 委託事業者
下請事業者 中小受託事業者

 以下では、改正の前後を問わず、上表の改正後の表現を利用しながら、上述の重要改正点①~③につき、簡単に説明していきます。

3.適用対象の拡大

 以下の(1)、(2)の改正により、取適法の適用対象が拡大され、これまで対象外であった取引も、規制対象になる可能性があるため、注意が必要です。

(1)適用基準に「従業員基準」を追加

 従来の資本金要件に加え、下図のとおり、従業員要件(300人又は100人)も追加されました(取適法2条8項、9項)。

【図:委託事業者・中小委託事業者の定義(「中小受託取引適正化法ガイドブック」(公正取引委員会ウェブサイト)より抜粋)】

取適法における委託事業者・中小委託事業者の適用基準に「従業員基準」が追加されたことを説明する画像

(2)対象取引に「特定運送委託」を追加

 「特定運送委託」とは、下図のイメージのように、事業者が業として販売する物品、業として製造や修理を請け負った物品又は業として作成を請け負った情報成果物が記載等された物品について、その取引の相手方(当該相手方が指定する者も含む。)に対して運送する場合に、その運送の行為を他の事業者に委託することです(取適法2条5項)。

【図:特定運送委託のイメージ(「下請法・下請振興法改正法の概要」(公正取引委員会ウェブサイト)より抜粋)】

取適法の対象に追加される特定運送委託の範囲について説明する画像

 いわゆる物流問題への対応の必要から、従来の下請法の対象ではなかった特定運送委託も、対象取引として追加されました(取適法2条6項)。自ら発荷主となって運送事業者に対して物品の運送を委託する場合には、取適法の適用対象となる場合がありますので、注意が必要です。

(3)取適法の適用判断

 取適法は、適用対象となる取引の範囲を①取引の内容及び②資本金基準又は従業員基準から定めています。例えば、資本金1000万円、従業員数が400人の委託事業者が、資本金500万円、従業員数が50人の中小受託事業者に物品の製造委託をする場合、下請法上は資本金要件を充足しないため、適用対象外でしたが、取適法の場合には、従業員要件を充足するため、適用対象となります。また、特定運送委託という取引の内容から従前下請法の適用対象ではなかった取引についても、資本金基準(3億円超対3億円以下若しくは1000万円超3億円以下対1000万円以下)又は従業員基準(300人超対300人以下)のいずれかを充足した場合には、取適法の対象となります。これまで自社や自社での取引が下請法適用対象外であったから無関係などとは思わず、一度、取引先の再点検を行うことをお勧めします。(取引の内容ごとの資本金要件及び従業員要件の概要については、上掲の【図:委託事業者・中小委託事業者の定義】等がわかりやすいです)。

4.規制内容の強化(新たな禁止行為)の例

(1)「協議に応じない一方的な代金決定」を禁止

 コストの変動等の理由により、価格交渉を求められたにもかかわらず、①協議に応じないこと、又は協議に応じたとしても、②中小受託事業者の求めた事項について必要な説明や情報提供をせず、一方的に製造受託等代金を決定することは禁止されます(取適法5条2項4号)。

(2)「手形払」等を禁止

 手形払等は、受注者に資金繰りに係る負担を課すことになることから、本改正では手形払等が禁止されました(取適法5条1項2号)。製造受託等代金の支払について手形を交付することは一律に禁止されたほか、支払期日(給付受領日から60日以内のできる限り短い期間内。取適法3条1項)までに代金相当額の金銭と引き換えることが困難なもの(例:支払期日を超える満期を設定した電子記録債権やファクタリングによる支払)についても、原則として、支払遅延として、禁止行為に該当します(取適法5条1項2号)。

(3)振込手数料の負担

 また、本改正に伴い、製造委託等代金の支払について、発注者が振込手数料を受注者に負担させることは、合意の有無にかかわらず違反(代金減額(取適法5条1項3号)に該当)するものとされました(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」第4の3(1)カ(公正取引委員会ウェブサイト))。

5.面的執行の強化

 事業所管省庁の主務大臣に助言・指導権限が付与されました(取適法8条)。また、「報復措置の禁止」の申告先として、現行の公正取引委員会及び中小企業庁長官に加え、事業所管省庁の主務大臣が追加されます(取適法5条1項7号)。また、関係各省庁は、取適法の施行に必要な限度で情報共有ができるようになります(取適法13条)。

6.その他重要な改正

 そのほか、以下の点につき改正がなされました。

(1)製造委託の対象物品の追加

製造委託の対象物品に、金型以外の型等も追加されます(取適法2条1項)。

(2)発注内容等の明示方法として、委託事業者の意思で電磁的方法の選択が可能に

 書面等の交付義務について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メール等の電磁的方法による方法とすることが可能になります。ただし、中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、原則として、遅滞なく、書面を交付することが求められます(取適法4条)。

(3)遅延利息対象の追加

 委託事業者が中小受託事業者に遅延利息を支払わなければならない場合として、中小受託事業者に帰責事由がないのに、代金減額した場合を追加しました(取適法6条2項)。

(4)既に違反行為が行われていない場合等の勧告に係る規定を整備

 違反行為を行った委託事業者により既に違反行為が行われていない場合でも、特に必要があると認めるときは、再発防止策等を勧告することができる旨の改正がされました(取適法10条2項)。

7.まとめ

 この記事では、下請法改正(取適法)につき、説明してきました。本改正により、取適法の適用対象は下請法よりも拡大する上、代金の支払方法や価格の協議義務等、対応が必要な事項も増加したため、従来下請法の適用を受けてこなかった発注者側も、例えば、下記のチェックリストに従った見直しを行う必要があります。
 また、受託事業者側としても、本改正により協議に応じない一方的な代金決定が禁止されるなど、自身に有利な改正がなされたことを踏まえ、積極的に価格協議を求めることで、実質的な価格協議につなげるなど、自身の負担にならない事業の継続を委託事業者と協力して進めていくことが重要でしょう(その他に受託事業者側が留意すべき点については、「取適法ポイントリーフレット(中小受託事業者向け)」(公正取引委員会ウェブサイト)も参考になります)。

Ⅱ 取適法対応チェックリスト(全業種・他社等に委託する側向け)

1.取引先の再点検(取適法の適用対象か?)

【図:委託事業者・中小委託事業者の定義(「中小受託取引適正化法ガイドブック」(公正取引委員会ウェブサイト)より抜粋)】

取適法における委託事業者・中小委託事業者の適用基準に「従業員基準」が追加されたことを説明する画像

2.契約書(ひな型含め)の見直し

(1)支払条件

(2)価格協議条項

例)「原材料費等の著しい変動があった場合、受託事業者(甲)の申出に応じ、甲と委託事業者(乙)双方協議の上、価格を変更することができる」

3.社内体制の見直し・整備

(1)契約・発注時等

*契約書・発注書等に記載すべき事項は以下のとおりです(取適法4条、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則参照)。

①委託事業者及び中小受託事業者の名称等

②製造委託等をした日

③給付の内容

④給付を受領する期日/場所

⑤(検査する場合)検査完了期日

⑥製造委託等代金の額(又は算定方法)及び支払期日

⑦(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項

*従来の事項に加え、支払方法が一括決済方式の場合、中小受託事業者が金融機関から貸付け又は支払を受けることができることとする期間の始期(例:譲渡承諾時)、電子記録債権を用いた支払の場合、中小受託事業者が製造委託等代金の支払を受けることができるとする期間の始期(例:発生・譲渡記録時)の記載も求められます。

⑧(原材料等を委託事業者から購入させる場合)原材料等の品名、数量、対価及び引渡しの期日並びにその決済期日及び方法

⑨(未定事項がある場合)内容が定められない理由及び内容を定める予定期日

⑩(基本契約等で一定の共通事項を事前に明示している場合)当該契約等による旨

⑪未定事項を後で明示する場合、当初明示事項との関連性を確認できる記載

例)「本書面(通知)は、○年○月○日付け発注書の記載事項を補充するものです。」

(2)価格再交渉時

(3)契約後いつでも

*本改正に伴う規則の改正により、支払方法が一括決済方式や電子記録債権を用いたものである場合、「その他事項」の記載も求められるようになりました。この「その他事項」には、決済日・満期日が代金の支払期日より後に到来する場合、支払期日に金銭を受領するために、中小受託事業者において割引を受けるなどの行為を要しないことや、中小受託事業者が支払期日に代金の満額に相当する現金を受領した状態となることが確保されていることや、支払手段の決済に伴い、中小受託事業者が受取手数料等を一時的に負担することになる場合には、あらかじめ書面(電磁的記録も含む。)による合意の上、代金支払期日までに委託業者がその負担分を補填し、中小受託事業者が支払期日に代金の満額に相当する現金を受領した状態となることが確保されていることが含まれます(「取適法施行に向けて事業者の皆様に御留意いただきたい事項」(公正取引委員会ウェブサイト))。

4.社内周知・研修

 ・・・取適法遵守に当たっては、現場担当者の取適法理解も重要です。結局、だれが何をすべきか、何をしてはいけないかなどにつき、下図も参考に、社内周知等を行いましょう。また、例えば、「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(公正取引委員会ウェブサイト)では、取適法の解説動画等もあるため、これらを利用することで、準備にかかる手間を避けつつ、実効的な周知や研修を行うことができるでしょう。

【図:取適法における委託事業者の義務と禁止事項(「取適法リーフレット」(公正取引委員会ウェブサイト)より抜粋)】

取適法における委託事業者の義務事項と禁止事項の具体的な内容を示した表の画像

5.最新情報に着目

 企業が対応しなければならない法改正等は数多くなされています。このような法改正に対応するためには、まず、最新情報に触れることが重要です。最新ニュースや法令の情報等を把握し、折よく対応していくために、Westlaw Japanがおすすめです。

*この記事は、文中のリンクの他、末尾のリンクを参考に、一部、編集・加工等して作成しています。簡易化のため、適宜省略・加筆等していますので、詳細は下記リンク等をご参照ください。

(掲載日:2025年12月19日)
*この記事は作成・更新時点での情報を基に作成されています。

参考になる公式のリンク情報を紹介します。(順不同)

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