第11号 【2026年12月までに施行】カスハラ対策義務化は全業種で対応が必要です
文献番号 2025WLJLG007
Westlaw Japan コンテンツ編集部
Ⅰ 概要
1.はじめに
2025年6月11日に、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)」が公布され、その大部分が2026年12月10日までの間で政令により定める日に施行されます。
①ハラスメント対策の強化
②女性活躍の推進
③治療と仕事の両立の推進
本改正の内容は、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」とします。)や「就活セクシュアルハラスメント(就活セクハラ)」対策の義務化等から、従業員数101名以上の会社における男女間賃金差異及び女性管理職比率の公表義務化、職場における治療と就業の両立を促進するため必要な措置を講じることの努力義務化等まで、非常に多岐にわたりますが、この記事では、カスハラ対策の義務化について、企業がすべき対応も含め、簡単に説明していきます。
2.カスハラとは?
①顧客、取引先、施設利用者その他利害関係者が行う
②社会通念上許容される範囲を超えたもので
③労働者の就業環境を害する言動
例えば、顧客による従業員に対する土下座の強要や、不当ないいがかりをつけるようなクレーム等はカスハラの典型例といえるでしょう。また、本改正により規定される「カスハラ」の主体には、取引先も含まれます。そのため、例えば、取引先が自社の従業員に対して執拗に電話を繰り返している場合も、カスハラに当たると考えられ、企業としては対応が求められます。また、本改正により対策が義務付けられたカスハラは、「労働者」の就業環境を害する言動であり、フリーランスに対する「カスハラ」は含まれていませんが、将来的には、フリーランスに対する「カスハラ」についても事業主が対応すべきとされる可能性が高いと考えられる(労働施策総合推進法改正附則8条の2参照)ため、これを見越した事前対策をするのも一つの手段といえるでしょう。
3.企業等に課されるカスハラ対策義務等の内容
本改正により、カスハラに関して、企業等、労働者、顧客等、国に対して各種義務(努力義務含む)付けがなされました。このうち、企業等が特に注意すべきなのは、以下の(1)「雇用管理上必要な措置」義務及び(2)解雇その他不利益な取扱いの禁止でしょう。
(1)「雇用管理上必要な措置」
企業等は、カスハラ防止のために、労働者の相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備やカスハラ対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置、その他の「雇用管理上必要な措置」を行う必要があります(労働施策総合推進法33条1項)。このような雇用管理上必要な措置の例としては、例えば、社内でのカスハラ相談窓口の設置や周知、カスハラ再発防止のための過去事例の記録・共有等があげられます。また、他の事業主から、同事業主が講ずる「雇用管理上必要な措置」の実施に関して必要な協力を求められた場合には、これに応じるよう努めなければなりません(労働施策総合推進法33条3項)。これらの規定に関して実際に行うべき措置の内容等については、今後公表予定の「指針」(ガイドライン)により定められる(労働施策総合推進法33条4項)予定です。
(2)解雇その他不利益な取扱いの禁止
労働者が相談を行ったことや事業主による相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、企業等が、当該労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いをすることは禁止されます(労働施策総合推進法33条2項)。
(3)義務違反のペナルティ
本改正において、カスハラ対策の義務に違反した場合の罰則は設けられませんでした。しかし、これらの義務の履行状況等については、厚生労働大臣等による報告請求の対象(労働施策総合推進法45条1項)であり、報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の過料に処されます(同法51条)。また、同各義務に違反した場合等には、厚生労働大臣による助言、指導、又は勧告がされる可能性があり、勧告に従わなかった場合には、その旨が公表されます(労働施策総合推進法42条)。
4.まとめ
本ガイドでは、2025年6月に公布された労働施策総合推進法改正のうち、カスハラ対策の義務化につき、説明してきました。企業等には、カスハラ対策防止のために必要な体制の整備等が求められ、このような義務に違反した場合、報告請求等の対象とされる可能性があります。また、カスハラ対策は、単に改正された法令を遵守するという観点だけではなく、労働者による生産性・収益の低下や企業イメージの低下等、企業に望ましくないリスクを避けるためにも重要であり、その対応は急務です。「指針」(ガイドライン)の公表前にあっても、さしあたっては、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(東京都ウェブサイト)や「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(厚生労働省ウェブサイト)ほか、「カスタマーハラスメント対策企業事例」(厚生労働省ウェブサイト)等を参考にし、カスハラ対策の検討等を行うことをお勧めします。特に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(東京都ウェブサイト)で定められた事業者の努力義務は、本改正により義務化された部分と重複する点があると考えられ、特に、東京都の事業者でまだ同条例に対応していない企業は、同条例に適合するような対応を進めることで、同時並行して本改正への対応を進めることができると考えられます。ただし、これらの情報は本改正の情報を反映しておらず、詳細は「指針」に沿った対応を行うことが重要な点には、注意が必要です。
Ⅱ カスハラ対策対応チェックリスト
1.「指針」(ガイドライン)に沿った対応を行うこと
本改正に対応したカスハラ対策を実施するためには、「指針」(ガイドライン)への対応が必須です。
2.カスハラ対策に有用と考えられる措置の例(事前準備チェックリスト)
以下は、カスハラ対策に有用と考えられる措置の例です。詳細は、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(東京都ウェブサイト)や「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(厚生労働省ウェブサイト)のほか、「カスタマーハラスメント対策企業事例」(厚生労働省ウェブサイト)等が参考になるでしょう。ただし、労働施策総合推進法上の義務の履行という観点では、「指針」(ガイドライン)に沿った対応をすべきことは前述のとおりです。
(1)基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
(2)相談体制の整備
(3)対応方法、手順の策定
3.最新情報に着目
企業が対応しなければならない法改正等は、本改正を含め、数多くなされています。
このような法改正に対応するためには、最新情報に触れることが重要です。最新ニュースや法令の情報等を把握し、折よく対応していくために、Westlaw Japanがおすすめです。
*この記事のチェックリストは、文中のリンクの他、末尾のリンクを参考に、一部、編集・加工等して作成しています。簡易化のため、適宜省略・加筆等していますので、詳細は下記リンク等をご参照ください。
(掲載日:2025年11月28日)
*この記事は作成・更新時点での情報を基に作成されています。