第6号 物流関連の法律が2つ改正されました
文献番号 2025WLJLG002
Westlaw Japan コンテンツ編集部
文献番号 2025WLJLG002
Westlaw Japan コンテンツ編集部
【この記事のポイント】
2025年4月1日に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(「物資の流通の効率化に関する法律(※)」(以下、「物流効率化法」とします。)に題名改正。)と「貨物自動車運送事業法(※)」の改正法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和6年法律第23号)(※))の一部が施行されました。これらの改正は、物流業界の効率化と安全性向上を目的としており、荷主や物流事業者に新たな義務や努力義務が課されています。以下、主な改正内容とその影響についてまとめます。
Ⅰ 概要 運送・荷役等の効率化を通じてトラック運転手の長時間労働の是正や人手不足解消を図るとともに、運送業務の適正な対価の確保等を通じて業界を健全化する取り組み
1.物流効率化法の主な改正点
物流は国民生活や経済活動を支える不可欠な社会インフラであり、様々な関係者が協力して2028年度までに、1回の受け渡しごとの荷待ち時間を1時間以内にすることや、日本全体で積載効率を44%にすることが目標(「物流効率化の推進に関する基本的な方針(令和7年農林水産省・経済産業省・国土交通省告示第1号)」(「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(国土交通省ウェブサイト)))に掲げられています。そのための具体策としてなされた今回の改正の内容を説明します。
(1)名称変更
法律の名称が「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から「物資の流通の効率化に関する法律」に変更されました。
(2)荷主・物流事業者の努力義務
すべての荷主(発荷主・着荷主)及び物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)に対し、物流効率化のための措置を講じる努力義務が課されました。措置の具体的な例は、以下の通りです。これには、トラックドライバーの荷待ち時間や荷役時間の短縮、積載効率の向上等が含まれます。国はこれらの取り組み状況を把握し、必要に応じて指導・助言、調査・公表を行います。
a 積載効率の向上
配送の共同化や運送の帰路における荷物の積載等の措置を講ずるために必要な時間を把握するなどの措置によってリードタイムを確保したり、出荷量・入荷量の適正化を図ったりすること等が求められています。
b 荷待ち時間の短縮
混雑状況の見える化によって荷物の受け渡し日時を分散させたり、トラック予約受付システムを導入して貨物自動車の到着日時を調整したりすること等により貨物の出荷・納品日の分散等を図ること等が求められています。
c 荷役等時間の短縮
パレット等の輸送具の導入や検品の効率化、荷捌き場の確保に努めること等が求められています。
(3)特定事業者の指定と義務
一定規模以上の荷主や物流事業者は「特定事業者」として指定され、中長期計画の作成や定期報告が義務付けられます。特定事業者のうち、荷主には物流統括管理者(CLO)の選任も求められます。中長期計画の作成期間と記載内容、定期報告の記載内容の概要は、下の表1及び2に記載の通りですが、詳細は、「中長期的な計画の作成」、「定期報告」、「物流統括管理者(CLO)の選任」(いずれも「物流効率化法」理解促進ポータルサイト(国土交通省ウェブサイト))等のリンクも参考になるでしょう。
2.貨物自動車運送事業法の主な改正点
(1)運送契約締結時等の書面交付義務
運送契約の締結時に、提供する役務の内容やその対価を明確にするための書面交付(メール等の電磁的方法を含む)が義務化されました。これにより、契約条件の透明性が向上し、トラブル防止が期待されます。なお、適用対象については、「改正貨物自動車運送事業法について」(国土交通省ウェブサイト)が参考になります。
(2)運送契約締結時等の書面交付義務
元請事業者は、委託先の事業運営が適正であることを確認し、実運送体制管理簿の作成等の必要な措置を講じる義務が課されました。また、下請事業者への発注適正化についての努力義務も課されました。これらにより、多重下請構造の是正や、適正な取引関係の構築が促進されます。
(3)一定規模以上の事業者の義務
一定規模以上の事業者に対し、下請事業者への発注適正化に関する管理規程の作成や責任者の選任が義務付けられました。
(4)軽トラック事業者に対する規制的措置
軽トラック事業者に対しても、必要な法令等の知識を得るために管理者を選任することと講習を受講すること、国土交通大臣に事故報告することが義務付けられました。
Ⅱ 荷主の種類と義務のチェックリスト(物流効率化法関係)
1.自社トラック以外のトラックを貨物の運送・受け取りに利用していますか?
2.運送契約の締結は自社が行っていますか?(元請トラック事業者、物流子会社、代行事業者等に委託する場合を含む)
3.自社トラック以外のトラックで運送する貨物の年間重量は9万トン以上*ですか?
*2025年4月1日時点での予定値(「改正物流効率化法の施行に向けた追加論点」(国土交通省ウェブサイト))。
4.自社トラック以外のトラックとの間で受け取る・引き渡す貨物の年間重量は9万トン*以上ですか?
*2025年4月1日時点での予定値(「改正物流効率化法の施行に向けた追加論点」(国土交通省ウェブサイト))。
5.最新情報に着目
新法や法令改正の動きに注視する。
物流効率化法のように、企業が対応しなければならない法改正等は、数多くなされており、対応するためには、まず、最新情報に触れることが重要です。最新ニュースや法令の情報等を把握し、折よく対応していくためには、Westlaw Japanがおすすめです。
*この記事のチェックリストは、文中のリンクの他、末尾のリンクを参考に、一部、編集・加工等して作成しています。簡易化のため、適宜省略・加筆等していますので、詳細は下記リンク等をご参照ください。
Ⅲ 今後の対応
1.今後の施行スケジュールと影響
(1)施行日等
2025年4月1日 | 改正物流効率化法、貨物自動車運送事業法の施行① |
2025年秋 | 判断基準に関する調査、公表 |
2026年4月 | 改正物流効率化法の施行② |
2026年4月末 | 特定事業者の届出、指定手続き |
2026年10月末 | 中長期計画の提出 |
2026年秋 | 判断基準に関する調査、公表 |
2027年7月末 | 定期報告の提出 |
(2)運送契約締結時等の書面交付義務
今回の改正は、物流事業者や荷主に限らず、フランチャイズチェーンの本部等、直接の荷主でない事業者にも影響を及ぼします。また、軽トラック事業者に対する規制も導入され、広範囲のビジネスに影響を与えるものとなっています。
2.企業が対応すべき事項
(1)物流効率化の取り組み
荷主や物流事業者は、荷待ち時間や荷役時間の短縮、積載効率の向上等、物流効率化に向けた具体的な取り組みを進める必要があります。
(2)中長期計画の策定
特定事業者として指定された場合、中長期的な物流効率化計画を策定し、定期的な報告を行う義務があります。
(3)物流統括管理者の選任
特定事業者である荷主は、物流統括管理者(CLO)を選任し、物流効率化の推進役としての役割を担わせる必要があります。
(4)契約内容の明確化
運送契約締結時には、契約内容を明確に記載した書面を交付し、取引条件の透明性を確保することが求められます。
3.国の支援措置
国土交通省は、物流効率化法に基づき、物流効率化の取り組みを支援するための施策を実施しています。これには、物流拠点の適正な配置や輸送の効率化を図る事業に対する計画の認定や支援措置が含まれます。
(掲載日:2025年4月30日)
*この記事は作成・更新時点での情報を基に作成されています。