再交渉後のNAFTAとは:自動車業界への影響 (2)

著者:Eric Miller

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自動車業界への影響

自動車業界はNAFTA再交渉の影響を大きく受けます。3カ国の政府は、北米自動車生産システムや将来の投資またはサプライヤー判断の方向性の基礎となるルールを大幅に変える可能性を見据えた決定に向けて準備を進めています。

どのような点の変更が考えられるでしょうか。

·        北米原産割合要件の引き上げ: トランプ政権の穏便な的シナリオの一つは、自動車に関して求められる原産品北米原産割合の大幅引き上げと考えられます。現時点では、軽量自動車の域内原産割合要件は、62.5%です。これが例えば75~80%に引き上げられた場合、アジアでの調達割合の低下と部品・自動車完成車コストの上昇が予想されます。その結果、OEM業者にとってもサプライヤーにとっても利益率への影響が生じます。

·        「3つに分解」: トランプ政権がNAFTAを三カ国協定の形態から3つの二カ国協定(米加・米墨・加墨)に変える方向に動いた場合、原産地規則も個別の規則になる可能性があります。仮にそうなった場合は、それぞれの協定にそれぞれの域内原産割合要件が設けられ、協定の適用を必要とする企業にとっては、今後も条件を満たすために生産のシフトを余儀なくされるリスクが高まることになります。

·        市場アクセス: カナダに関しては、交渉する協定の形式を問わず米国市場に対して関税・関税割当免除の扱いを確保するだろうというのが大方の予想です。これに比べ、メキシコの状況は不透明です。トランプ政権は、メキシコに投資した企業の製造品を米国に輸出する際には国境税をかけると繰り返し威嚇しています。しかし、米国が一部の製造品に対して関税や関税割当を本当に要求するのか疑問の声が上がっています。

·        法令遵守: 現行NAFTAには、自動車サプライチェーンの透明化を目的とした厳格な追跡ルールが設けられ、多くの自動車メーカーは、この要件の緩和を望んでいました。諸外国が貿易上の不当を働いているとの声が聞かれることを考えると、法令遵守は複雑化の一途と考えるのが妥当でしょう。

 

結論

北米自動車業界については、多くの政策転換の兆しが見られます。自社の利益拡大のために各社がNAFTA再交渉戦略を打ち立てる必要があります。地域全体をまたぐ地域経済圏規則が再び生まれる可能性は極めて低いです。委託製造会社やサプライヤーなどは、今後起きる変化を主体的に管理し、NAFTA後の新たな枠組みが最終的に機能し、あるいは有利に働くよう努める必要があります。

 

執筆者について

Eric Miller、Rideau Potomac Strategy Group、プレジデント(www.rideaupotomac.com)。5つの自由貿易協定のアドバイザーを務め、2009年のクライスラー、GM再建交渉においてカナダ政府チームの一員として活躍。ウッドロウ・ウィルソン・センターおよびスティムソン・センター特別研究員。