- トムソン・ロイター
- 三井物産株式会社 – ONESOURCE Pagero 導入事例
複雑な税務コンプライアンスの向上の仕組み、グローバル展開を支えるデジタルインボイス
年間1兆円の取引を支える基幹システムへ
デジタルインボイスを導入
―デジタル総合戦略部の業務内容について教えてください。
当社のデジタル総合戦略部では、社内の業務システムおよびネットワークの開発・運用を取りまとめるとともに、事業をデジタル化する案件や最新技術に挑戦するPoC案件にも取り組んでいます。100名を超えるメンバーが所属し、ニューヨークやロンドン、シンガポールなど海外拠点にも部署があります。石油・ガス精製施設へのIoT導入によるデジタルツイン構築や、航空測量データを用いたCO2可視化によるカーボンクレジット創出、ブロックチェーンを活用したアフリカ農家のサプライチェーン可視化など、先進的な取り組みも行っています。「挑戦と創造」という言葉を大切にしている企業として認知していただけるよう、さまざまな挑戦をしています。その中で、私たちの組織は日々、ERP・営業システムの開発運用を進めており、内部統制をしっかりと確保した形での開発が求められています。インボイスの発行は、まさに内部統制の要素となるため、内部統制を維持しながらシステムを開発する役割を果たしています。
―デジタルインボイスの導入を検討した背景について、教えてください。
インボイスをデジタル化することで付加価値税の徴税プロセス を透明化し、税収の漏れを防ぐ取り組みが世界的な潮流となっ ています。当社のCFO統括部とデジタル総合戦略部では、欧州 現地で個別に検討していた課題を早期に把握し、グローバルなプラットフォームを通じた業務プロセスの標準化のチャンスと捉え、2022年より導入を検討してきました。 今回『ONESOURCE Pagero』と接続する海外向けのERPシス テム「MUGEN」は既に30カ国以上で導入されており、現地法人を含む約50社が利用しています。年間の取扱高は1兆円を超え、請求書などを発行していますが、この中でデジタルインボイスの規制に対応していく必要がありました。欧州では、EU理事会にてデジタル化に対応するための新たな VAT規制である VAT in the Digital Age(ViDA)が承認され、域内における各国規制の標準化が進み、規制導入のスケジュールも明示されていることから、当該地域を先行領域と定め、米州など他地域のニーズも並行してヒアリングしながら、導入するプラットフォームの選定を実施しました。
―デジタルインボイスの導入前の難しさはどのような点にありましたか?
グローバルなプラットフォームの導入という、各国拠点とコンセンサスを取りながら進めていく難題に対し、早期からCFO 部門と協働しました。CFO部門とデジタル部門が税務コンプライアンスとシステム的な観点から、欧州の地域統括部署と継続 的な議論を実施することで道が開けました。これは三井物産が培ってきた企業文化かも知れませんが、各国拠点や各関連部署がそれぞれ情報を集め、お互いに意見を持ったうえで主体的に取り組む社風があったのも非常に大きかったです。また、『ONESOURCE Pagero』の場合は、各国の規制スケジュールを踏まえ、段階的な導入を可能とする契約形態があったことも後押しになったと考えています。
導入の決め手は世界各国の法規制対応力と長期運用能力
―採用の決め手となったのは、主にどのような点だったのでしょうか。
2022年から検討を始めたのですが、当時は世界的にデジタルインボイスへの対応が始まったばかりのタイミングでした。そのため、デファクトスタンダードとなるプラットフォームが存在しない中、手探りで候補を探しました。Peppol(ペポル)という国際的な電子取引ネットワークに参加しているSaaS企業は数十社あり、そこから10社ほどに絞って提案を依頼しました。 最終的に『ONESOURCE Pagero』を選んだ決め手は、業務要件・非機能要件を網羅していることに加え、各国の法律や規制に対応するサポート体制が確立されていることでした。
―選定にあたって重視された要件は具体的にどのようなものでしたか?
最も重要だったのは、世界各国の規制や法律に対応できることです。現在の規制に対応しているだけでなく、将来規制が変わった時にも継続的に更新してくれる体制があるかどうかを重視しました。2つ目は、プロジェクトマネジメント力です。私たちが提示した数十項目の条件に対して、期限内にきちんと具体的な回答をくれるかどうかを見ました。この点では各社の対応に大きな差があり、「今はまだ答えられない」と言う企業もあるなかで、誠実に対応してくれる企業を選びました。3つ目は、長期運用の能力です。長期間にわたってサービスを安定して提供できる体制があるか、システムに問題が起きても対応できる仕組みがあるか、世界各国の個人情報保護法にどのように対応しているかなど、運用面の信頼性を重視しました。
欧州 3 拠点を皮切りに アジア拠点を含めた各国での展開計画を推進
―導入プロセスについて、どのような流れでカスタマイズが進められているのでしょうか。
東京本社のデジタル総合戦略部とCFO部門が協働でプロジェ クトマネジメントを実施します。また、各地域の部署が現地ユーザーの要件を把握し、トムソン・ロイターのプロジェクトマネージャーと協働で導入プロジェクトを推進しています。東京にある当社のシステム子会社が社内のERPシステムを管理しているので、『ONESOURCE Pagero』とERPシステムをつなげるなどのシステム開発作業を担当してもらっています。
―このプロジェクト自体はどのくらいの規模で遂行されているのでしょうか?
プロジェクトの中心メンバーは7人程度ですが、関係者全体では現時点で30人ほど関わっています。今後、システム開発を担当する子会社や各国の現地ユーザー、共通業務を担当するスタッフなども加わると、総勢60人を超える大規模なプロジェクトになると予想しています。
一度の接続で複数国に展開可能、開発コストと負担を削減
―『ONESOURCE Pagero』について、優れていると感じる機能はありますか。
各国の法規制に関する知見が豊富で、規制の変更にも迅速に対応してくれるので、適切な情報を提供してもらえる点が助かっています。また、「Pagero Universal Format」という標準形式で MUGENから『ONESOURCE Pagero』へデータを送れば、各国政府や国際的な電子取引ネットワーク(Peppol)に送る際の形式変換は自動で対応してくれます。この機能が、システム実装のハードルを下げてくれています。各国の規制対応を個別に行う場合と比べて非常に効率的で、開発コストを大幅に削減できます。これは、システム開発子会社の負担軽減にもつながっています。
―実際に導入してみての使い勝手はいかがですか?
マレーシアではすでに『ONESOURCE Pagero』が稼働しており、使い勝手は良好です。特に優れているのは、エンタープライズ向けサービスとしての品質の高さです。プロジェクトキックオフでの対応も素晴らしく、追加料金なしで高水準なプロジェクトマネジメントをご提供いただいています。
デジタルインボイスの導入を契機に業務の標準化と集約化を推進
―経営戦略やデジタル総合戦略部の今後の展望について教えてください。
当社はDX総合戦略において、DX事業戦略・DD経営戦略・DX人材戦略の3つを掲げています。システム部門がDXの旗振りをするだけでなく、現場社員が主体的にデジタル技術を活用できるよう日々取り組んでいます。例えば、DX事業戦略、DD経営戦略といったDX総合戦略部で取りまとめる全社方針を、現場社員が支えられるように、DX人材戦略としてDX人材を2026年3月末までに、全社で1000人以上を育成することを目標としています。
欧州3拠点の請求書発行量は合計で年間2万件。今後も多くの拠点への展開を目指しています。
―導入拠点についての展望はいかがでしょうか?
欧州は地域全体としてデジタルインボイスへの対応を計画しているため、まずはベルギー、フランス、ドイツの3拠点への導入を推進しています。これらの拠点は特に取引量が多く、請求書発行量は合計で年間2万件に及びます。今後もリソース の許す限り、さらに多くの拠点への展開を目指しています。また、アジア地域でも、マレーシアでデジタルインボイスの義務化が始まり、『ONESOURCE Pagero』を使いたいという要望があり、先行して導入しました。
―デジタルインボイスの導入を通じて、今後どのような業務改善を目指していますか?
デジタルインボイスの導入を通じて、共通の標準プラットフォー ムを利用して業務プロセスを統一し、結果として効率化と内部統制の向上を目指しております。例えば、これまで発行していたPDF形式の請求書が不要になり、文書管理が一元化されることで業務効率化が見込めるだ けでなく、導入国ではプラットフォーム上でデジタルインボイスを送付することができ、メールでの送付が不要になるため、ビジネスEメール詐欺に対する内部統制の向上も期待できま す。