国際貿易の課題:新型コロナウイルス流行によるサプライチェーンの問題点とその変化

2020年5月6日

新型コロナウイルスの流行により世界のサプライチェーンが混乱している中、トムソン・ロイターは、グローバル貿易・税関コンサルタントとして20年近くの経験を有するEYのプリンシパル、トッド・R・スミス氏に多国籍企業への影響についてのお話を伺いました

トムソン・ロイター:現在企業が直面している国際貿易とサプライチェーンマネジメントに関連する最大の課題は何ですか?

 

トッド・R・スミス氏:一般的な問題点とニーズとして、二点上げたいと思います。 第一に、世界的な金融業務の停滞によるキャッシュフローへの影響を軽減するため、各国は法律を可決したり、規制を改正したりしています。国際貿易業務に関わる人にとって、世界各国の税制や貿易優遇措置をすべて把握しておくことは困難です。政府が発表している優遇措置をすべて追跡し、それを追求することが意味のあることなのかどうかを判断する方法が必要です。

税関だけではありません。 所得税、消費税、給与税など広範囲に及びます。世界中で数多くの対策が実施されています。 それらをすべて把握するのは困難といえるでしょう。

 

トムソン・ロイター:二番目の課題は何ですか?

 

トッド・R・スミス氏:サプライチェーンを可視化するという概念が全く変わりました。通常、国際貿易業務の責任者やマネージャーは、発注している商品の発注書(PO)と納期を管理しています。しかし今回の新型コロナウイルスの流行により、アジアでの操業停止のため、工場からの出荷連絡はほとんどなくなってしまいました。ほとんどの企業にとってサプライチェーンは完全なブラックホールになってしまったのです。

また、製造工程のどこに注文した製品があるのかもわかりません。製品がラインから出てきて梱包されているのか、どこかのコンテナに入っているのか、見当もつきません。また、物理的にどこにあるのかという物流だけでなく、財務の流れもわかりません。出荷のライフサイクルの中で、POや請求書、支払いのどこにあるのか把握できなくなってしまいました。

では、どうしたらよいのでしょうか?工場に行って調べてみますか?国内の運送会社に行って調べてもらいますか?海運会社に行って、聞いてみますか?工場が銀行から通常受け取るLCを受け取っていないので、製品が作られていないのでしょうか?

私が言ったように、リアルタイムの物理的および財務的フローの可視性の概念は、新しい意味を帯びてきました。

 

トムソン・ロイター:即効性のある解決策はありませんが、企業は長期的にどのように対応するべきと思われますか?

 

トッド・R・スミス氏:歴史的に、私たちは「コントロール・タワー」という意味でサプライチェーンの可視性について議論し、対処してきましたが、その概念が再浮上しています。多くの企業が、「コントロールタワー」をどのように実装し、財務フローの可視性をどのようにレイヤー化するかを再評価し、考え出すことになるでしょう。

私は、すべての書類やフローがオープンになれば、より良い可視性を持つという考えについて、多くの議論や動きがあるだろうと考えています。製品の物理的な移動だけでなく、原産地証明書や信用状などの金融文書など、必要とされる書類もリアルタイムで可視化することが求められるようになるかもしれません。

 

トムソン・ロイター:企業で貿易業務に携わる人にどのような影響が出ているのでしょうか?

 

トッド・R・スミス氏:大混乱です。企業内には多くの従業員がいて、それぞれができる限りのことをし、状況把握に努めています。経理部が銀行とやり取りし、物流部がフォワーダーとやり取りをしています。常に社内の誰かが情報を収集し、状況を把握しようとしています。大部分はエクセルを使っています。緊急事態であり、混沌としています。

 

トムソン・ロイター:長期的には、どのような運用上の変化が予想されますか?

 

トッド・R・スミス氏:より優れた可視化ツールの開発が復活すると思います。また、また、大手小売業者(ハードウェアであろうとアパレルであろうと)がコンプライアンスを向上させるために、サプライチェーン内のベンダーの数を統合しようとしている傾向が見えてきています。サプライヤーは企業からより多くの受注をし、その見返りとして規制に対応するための投資を行うことで、企業はサプライヤーがコンプライアンスを遵守したパートナーであることが保証されます。

しかし、今、私たちは、早期に回復した場合のシナリオを基にその影響を考えています。一つのカゴに全ての卵を入れて、もしある地域が閉鎖されたらどうなるのでしょうか?十分に迅速に適応し、業務回復することができるでしょうか?

2つの変化が起こると思います。サプライチェーンが短くなり、生産がもう少し消費地に近いところで行われるようになるでしょう。そして、サプライヤーの多様化が進むと思います。企業が別の地域に生産拠点を移転する必要が生じた場合、より迅速にシフトできるようになります。それは言うは易し、行うは難しです。しかし、私はそれが新しい現実になると思います。

 

トムソン・ロイター:どのような点で、言うは易し、行うは難しなのでしょうか?課題は何ですか?

 

トッド・R・スミス氏:いわば現在起こっている状況を評価し、サプライチェーンを迅速かつ機敏に変更できるかどうかは、優れた情報にかかっています。例えば、生産を中国からカンボジアに移す場合、カンボジアに生産需要を満たす能力を持つ工場があるか確認するだけでなく、陸揚げコストに与える影響も考慮しなければなりません。

生産コストや製品の出荷コストの確認だけでなく、関税や税金がかかる可能性もあるので、その確認も必要です。例えば、自由貿易協定を結んでいる国で製造をしている場合もあるでしょう。

これらはすべて考慮すべき点です。迅速な分析能力は、より機敏な時間枠での意思決定を促進するのに役立つことは間違いありません。新たな最高クラスの運用となるでしょう。企業は政府と同様に、現在の新型コロナウイルスの流行による危機から学び、行動を起こせるのか、それとも生き残ったことに安堵のため息をつくのか、単に道を踏み外すだけなのか?それはまだわかりません。

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