【Ones0urce Dataflow】
ルネサス エレクトロニクス
株式会社
税務業務を標準化・可視化し、内製化を加速 - 税務部門を「戦略的組織」へ
税務部門の全体像――申告対応からプランニング・M&Aまで
――税務部門の役割と、具体的な業務内容を教えてください。
Accounting & Taxのうち、会計部門が決算対応や財務諸表の作成、監査対応を主に担うのに対し、税務部門は日本に7名のチームで、税務申告の対応、タックスプランニングとM&Aサポートを主軸に業務を行っています。
タックスプランニングと一言で言っても範囲は広く、税法に沿って適切に納税することを前提に、制度の解釈や実務上の論点も踏まえながら、税負担をコストとしてどう最適化し、効率化していくかを継続的に検討します。税額を計算して申告するだけでなく、取引や組織の設計、契約条件の整理などを通じて会社全体の利益につながる意思決定を支える―それが、税務部門の役割だと考えています。
――半導体業界はM&Aが非常に盛んな印象がありますが、税務部門としてどのように関わっているのでしょうか。
当社の場合、過去9年間だけで大型買収が4件、全体では10件以上に上ります。買収後、対象会社をスムーズにグループへ統合するためには、税務の観点からグループ全体の組織をどのように設計するかが非常に重要です。また、買収前には対象会社の財務・税務状況を丁寧に精査し、潜在的なリスクがないかを確認します。論点が見つかれば、リスクをコントロールするため補償条項を契約に盛り込むなどの対策を講じますが、対価を支払った後では手遅れになりかねません。そのため、税務部門は法務や人事と連携しながら、契約締結前の段階から深く関与しています。
Accounting & Tax 部長 イ ドンホ氏
グループ税務を支えるデータ整備の仕組みづくり
――今回、ONESOURCE DataFlowを導入したのは、具体的にどのような業務課題を解決するためだったのでしょうか。
主な目的は、日本のCFC税制、つまり外国子会社合算税制への対応強化です。現在、当社は日本を本社として世界約40カ国に100社以上の子会社を有しています。CFC税制では、一定要件を満たす海外子会社の所得を、日本の親会社の所得と合算して申告・報告する必要があります。そのため、各子会社の税務申告書や財務諸表に加え、日本の税制に基づく調整項目まで含め必要な情報を網羅し、かつタイムリーに収集・把握できる体制が不可欠です。ONESOURCE DataFlowの導入は、こうした情報収集・整備の負荷を抑えつつデータの一元管理と可視化を進めることで、CFC対応の精度と効率を高める狙いがありました。
ONESOURCE DataFlow ソリューション概要
――従来はどのような方法で対応されていたのでしょうか。
メールとExcelをベースにした、手作業中心の運用でした。各子会社の担当者にメールで依頼し、PDFやExcelで資料を入手するのですが、送られてくる資料の形式は案件ごとにばらつきがあり、言語も当然異なります。それらを日本側の3〜4名で一つひとつ確認し、保存・整理・集計する作業を繰り返していました。
このやり方だと「どの資料がどのメールに添付されていたのか」を、後から探し直すだけでも大きな負荷になります。加えて、Excelを誰かが編集したことで計算式が崩れる、最新版がどれかわからなくなる、質疑応答のやり取りが各所に散逸するといった事態も日常的に起こっていました。税務調査の局面で「なぜこの判断に至ったのか」という根拠を遡ろうとしても、必要な情報を揃えるのに相当な手間がかかります。さらに、外部アドバイザーとも情報を共有しながら作業を進める必要があるため、情報を一元的に集約し、可視化できる仕組みの整備が急務だと感じていました。
システム選定の決め手
――システムの選定にあたっては、どのような候補を比較されたのでしょうか。
通常、1社だけに絞ってリクエストを出すことはありません。RFP(提案依頼書)を作成し、複数社から提案を受けて比較検討しました。候補としては、Big4が独自に提供しているソリューションのほか、SharePointにマクロを組み合わせて運用・管理する方法などもありました。
ただ、SharePointとマクロの組み合わせでは、自動化の面でどうしても限界があります。私たちが求めていたのは、データを入力すれば集計から申告書への反映までが自動化され、進捗や作業状況がリアルタイムに可視化される仕組みです。その観点で、SharePointは要件を十分に満たしきれないと判断しました。
――最終的にDataFlowを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
最大の決め手は、特定の監査法人や税理士法人に依存しない「独立性」と、必要な機能が揃っていた点です。監査法人系のソリューションも検討しましたが、使い勝手は非常に良い一方で、将来的に監査法人や税理士法人の体制が変わった場合に、運用やデータの引継ぎ面で制約が生じ、結果としてベンダーロックインに繋がる懸念がありました。
その点、ONESOURCE DataFlowは特定のプロフェッショナルファームには紐づかない第三者のプラットフォームとして提供されているため、体制変更があっても運用を継続しやすいと判断しました。機能面でも、Webベースで社内外のアクセス権限を柔軟に管理でき、誰がいつどのデータを入力し、どのような判断・承認をしたのかというログがすべて記録に残り、アドバイザーとの質疑応答やフィードバックも同じ場で管理できます。この作業の透明性と統制を高められる点が、私たちの要件に合致しました。
グローバルプロジェクトと連動する導入プロセス
――社内で進められているグローバルプロジェクトとは、どのような関わりがありますか。
当社は、この9年間で複数の企業を買収してきた結果、拠点ごとに異なる基幹システムが混在する状況になっていました。例えば、本社はSAPでも、ある子会社は別バージョンのSAP、また別の拠点はOracleという具合です。グローバルプロジェクトは、こうした分散した環境を、グローバルで単一の基幹システムに統合していく取り組みです。狙いは単にシステムを統一するだけでなく、属人化していたプロセスや、旧会社ごとに異なっていた調達・法務・税務などの業務フローも標準化することを目指しています。ONESOURCE DataFlowの導入は、この全社的なDXとシステム統合の流れの中で、税務領域の標準化・可視化を進める施策として位置づけられています。将来的にはSAPから必要データを直接抽出し、ONESOURCE DataFlowと連携させることで、手作業を極力排除する構想もあります。そういう意味で、ONESOURCE DataFlowはグローバルプロジェクトを税務実務の側面から支える、重要な土台になると考えています。
――実際の導入はどのようなスケジュールで進められたのでしょうか。
意思決定フェーズだけで数カ月を要し、実装とテストまで含めると全体で約10カ月かかりました。会社にとっては重要な投資判断ですので、「なぜこの投資が必要なのか」「どのように効果を回収するのか」というストーリーを整理し、マネジメントや予算管理部門の理解を得るプロセスが欠かせませんでした。実際の導入にあたっては、税務部門だけでなくIT部門も参画し、セキュリティ要件や基幹システムとの親和性も確認しました。Thomson Reutersの実装チームと外部アドバイザーのサポートを受けながら、今後数年にわたって継続的に利用できる運用・設計を丁寧に作りこんでいきました。
効率化の手応えとハイブリッド勤務との親和性
――実際に運用を開始してみて、チームの反応はいかがでしたか。
導入初年度である現時点では、新しいシステムやプロセスに慣れる必要がある分、例年よりも負荷が増えているのが正直なところです。子会社側でも、これまでの進め方を改める必要があり、一定の学習コストがかかっています。ただし、これはいわゆるラーニングカーブの範囲だと捉えています。来年以降、運用が定着して習熟が進めば作業の標準化により、確実に効率化の効果が出てくるはずです。
ONESOURCE DataFlow導入後 業務上の利点
――早い段階で感じられた効果はありますか。
人的ミス、特にExcelのリンクミスに起因するリスクがほぼ解消されたのは大きいです。以前は、誰かが1行追加しただけでワークシート全体の計算式や参照関係が崩れてしまうこともありましたが、現在はその心配がありません。また、進捗状況がシステム上一目で把握できるため「作業は終わりましたか」という、確認メールを都度送る手間も減りました。さらに、レビューメモや質疑応答の履歴もすべてシステム内に蓄積されることで、必要な情報を後から追いやすくなり、透明性が格段に向上しています。
加えて、当社は現在ハイブリッド勤務を導入しており、日本チームは出社と在宅を組み合わせて働いています。ONESOURCE DataFlowの導入前は、進捗確認のためにメールやチャットで逐次連絡する必要がありましたが、導入後の現在はステータスを更新するだけで全員に共有されます。物理的な距離に左右されずに業務を進められる点でも、現在の働き方との相性の良さを強く感じています。
内製化とナレッジ蓄積を目指して
――今後の展望として、どのような目標を掲げていますか。
現在、100社以上の税務対応のうち約半数は社内で完結できていますが、残りの半数は外部コンサルタントに依頼しています。今後はONESOURCE DataFlowをより使いこなし、プロセスを標準化・効率化することで、社内で対応できる比率を高め、外部への依存度を下げていきたいと考えています。
これは、コスト削減だけが目的ではありません。外部に委託しきってしまうと、判断の背景となる知見が社内に蓄積されません。税法をどう解釈し、どのようなプロセスで計算し、どのような前提で結論に至ったのか。この一連の過程を自分たちで把握していなければ、税務調査への対応力は上がりませんし、将来の改善案も生まれません。内製化の本質は、ナレッジを社内に蓄積し、再現性のある形でプロセスとして確立することにあると考えています。
――ルーティン業務が効率化されることで、税務部門の役割そのものも変わっていくのでしょうか。
その通りです。実際、昨年は約130社あったグループ会社を1年間で30社ほど削減しました。今後は、こうした法人統合やストラクチャーの簡素化といった、より付加価値の高い戦略的な業務へリソースを再配分していきたいと考えています。税務部門は、決められた税金を計算するだけの受け身の存在であってはならないと思っています。例えば、トランプ関税のような突発的な政策変更が起きた際も、即座に会社への影響を評価し、経営陣に分かりやすく示せる―そうしたアクティブで戦略的な組織を目指しています。ONESOURCE DataFlowは、その実現を後押しする強力な基盤になると確信しています。
今後は、ルーティンはシステムに任せ、人にしかできない判断と戦略に集中できる環境を着実に作り上げていきたいと思っています。
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