ONESOURCE Pagero 導入事例
稲畑産業株式会社導入事例
分散していたデジタルインボイス対応を、グローバル標準ソリューションへ集約
稲畑産業株式会社 お客様情報
1890年(明治23年)創業、135年以上の歴史を持つ化学品専門商社。「情報電子」「化学品」「生活産業」「合成樹脂」などの事業領域を柱に、自動車、半導体、医療、環境・エネルギーなど幅広い産業の基盤を支える素材や技術を提供。
海外19カ国約70拠点にわたり、グローバルサプライチェーンの最適解を提供するトレーディングおよび事業投資を展開している。
ご担当者様 お写真(左から)
デジタル推進室 グローバルIT推進部長 原田隼人氏
デジタル推進室 グローバルIT推進部ビジネスソリューション課 下山雄也氏
デジタル推進室 グローバルIT推進部ビジネスソリューション課 外部アドバイザー 池佳子氏
デジタル推進室の体制と、今回のプロジェクトの担い手
―デジタル推進室の体制とご自身の役割について教えてください。
原田氏:デジタル推進室は、いわゆる情報システム部門にあたります。インフラを担う部隊と、下山が所属するビジネスソリューションの部隊による二課体制です。ビジネスソリューション課は、約10年前、海外拠点ごとにシステムがバラバラだったことを受け、基幹業務システムをSAPへ統一していくプロジェクトを立ち上げました。そこから5年ほどかけて世界13拠点への導入を終え、現在はその運用保守を担う部署となっています。私自身は部長として、予算作成や意思決定を担う立場にいます。
下山氏:2015年に稲畑産業へ入社し、約10年間は化学品本部で塗料や接着剤などの原料の営業を担当していました。2024年にデジタル推進室へ異動となり、現在はSAPの運用保守や海外展開プロジェクトのほか、ドイツ拠点へのデジタルインボイス導入を担当しています。
導入の背景―各国バラバラ対応の限界とグローバル統一の必要性
―今回のシステム化に至った背景と、課題感についてお聞かせください。
下山氏:出発点は法令対応です。ドイツでの導入以前にも、インドやベトナム、中国などでデジタルインボイスを導入した経験がありましたが、欧州への導入は今回が初めてでした。そのため、まず1ヶ月ほどかけてソリューションを提供する企業13社と面談し、そこから3社に絞り込んだうえで、メリット・デメリットやコスト感をドイツ拠点に共有し、現地と相談しながら決めていきました。
原田氏:これまでは中国やベトナム、マレーシア、インドなどでデジタルインボイス対応が必要になるたびに、現地ベンダーのソリューションを個別に導入してきました。当初はそれでも問題ないと考えていたのですが、回数を重ねるごとに非効率な部分が目立つようになりました。毎回新規の開発が発生し、インターフェースも異なるため、一つひとつは安価でも、3社目、4社目となるとトータルの開発コストは無視できない規模になっていました。ちょうどドイツの案件が持ち上がったタイミングで、シンガポールやフィリピンでも来期以降の対応が視野に入っていることが分かり、「グローバルで統一して使えるソリューションを考えなければ」という判断に至りました。
―運用保守のコスト面でも、課題は大きかったのでしょうか。
原田氏:はい。インターフェースが複数存在すると、エラー対応や法改正に伴う仕様変更のたびに個別のコストが発生します。運用保守にかかる負担も、当初の想定以上に大きいという問題意識を持っていました。
13社比較から見えた選定プロセス―現地との合意形成
―13社という広範な比較は、どのように進められたのでしょうか。
下山氏:特定のつながりや紹介に頼らず、公開情報だけで調査しました。「ドイツ インボイス対応」といったキーワードでの検索に加え、生成AIにキーワードを挙げてもらうなどして情報を集めました。ドイツにIT担当者がいない中、まず私がすべての企業から話を聞き、実現したい内容と期限を伝えて提案を受けました。3社に絞った段階で現地に共有しましたが、現地はコストを非常に重視します。そこで「コストは高いが性能が高い案」「コストは抑えられるが手作業が増える案」といった複数の選択肢を用意し、こちらから一方的に押し付けるのではなく、現地が納得したうえで選べるよう比較材料を整えていきました。
原田氏:これほど広く比較したのは今回が初めてでしたが、下山には「できる限り情報を集めてほしい」と伝えていました。ドイツのローカルベンダーも含めてすべて調べ上げ、Excelで大きな比較表を作成したうえで絞り込んでいったという経緯があります。
―最終的に「ONESOURCE Pagero」に決まった経緯についても教えてください。
下山氏:13社とやり取りする中で、対応の速さや、できること・できないことの違いが明確に見えてきました。決め手のひとつは、担当の迫本さんの対応が非常に早かったことです。困ったときにすぐ回答をもらえるだけでなく、一を聞けば二を返してくれるような姿勢があり、早い段階から信頼を寄せるようになりました。その誠実な対応ぶりを現地にも伝え、巻き込んでいくことができました。
決め手となった二段階導入提案と、担当者への信頼
―機能やコスト以外で、他社との違いを感じた点はありますか。
下山氏:他社にも機能面で近いことができるサービスはありましたが、コストが見合わないケースが目立ちました。2社まで絞った段階では機能はほぼ同等でしたが、最後は「人」で決まったという印象があります。もう一社の営業や技術担当者からの回答は、やや分かりづらいものでした。
原田氏:実は、もう一社については現地のドイツスタッフから「その会社のドイツ子会社に知人がいる」という推薦もあったのでが、日本側から見て対応が充分とは言えなかったこともあり、最終的にはお断りしています。もう一つの大きなポイントは、スケジュールに関する提案です。弊社では現在、SAPのバージョンアップが並行して進んでおり、現行バージョンではONESOURCE Pageroの機能を十分に活用できません。バージョンアップの完了は12月を予定している一方、ドイツの法令対応は翌1月が期限で、非常にタイトな日程でした。この課題を迫本さんに相談したところ、「まずSFTPでのデータ連携から始め、バージョンアップ後に第二フェーズとしてAPI連携へ切り替える」という二段階の導入案をいただき、これが大きな決め手になりました。
下山氏:加えて、ドイツについて話している際に、欧州各国の制度状況を私たちが知らない情報も含めて教えてくださったことが印象的でした。シンガポールやフィリピンへの展開を見据える中で、こうした先を見越した情報提供には安心感がありました。
原田氏:機能が似通ってくると、最終的な判断基準は営業担当者と、その方が連れてきてくれる技術者の印象になります。海外拠点を巻き込む際は特に、営業がプロジェクトの「顔」になりますから。どんなに優れたツールであっても、最後は誰と一緒に進めるかが重要だと感じています。
プロジェクトの現在地―多国間連携の実際
―現在のプロジェクトはどのような段階にあり、どのような体制で進めているのでしょうか。
下山氏:2026年4月にトムソン・ロイターさんとプロジェクトを開始し、現在はフィールドマッピングの段階です。まずSFTPサーバーでの連携から始めるため、データの紐付け作業から着手しています。体制としては、週に一度30分から1時間ほどの定例会議を設け、ドイツ拠点のメンバーに加え、トムソン・ロイター側からも日本とインドのチームが参加する多国間の会議になっています。進捗の共有はもちろん、その週に出た疑問点をその場で議論しながら、少しずつ解消して進めている状況です。
原田氏:私は細かい検討を下山に任せ、定例会には同席する形をとっています。会議では進捗や課題についての議論が活発に行われていると感じますね。効率化の面では、Teamsでグループを作って情報を共有したり、SharePointでデータを共有したりといった工夫を取り入れ、プロジェクトを効率よく回せていると見ています。
―日本のプロジェクトマネージャーに加え、インドのメンバーが欧州プロジェクトを支える体制をとらせていただきましたが、実際に動かしてみていかがですか。
下山氏:こうしたプロジェクトへの参加自体が初めてなので他と比較はできませんが、インドスタッフとのやり取りも通訳を含めてトムソン・ロイターさんが対応してくださっています。不明点があればドイツの技術担当者に直接確認してくださることもあり、現在の進め方には十分に満足しています。
今後の展望―AP側拡大、GoBD対応、そして他拠点展開へ
―導入完了後、どのような効果を期待されていますか。
原田氏:ドイツについては、まずインボイス発行、つまり売掛(AR)側のみの導入を予定しています。ですが、できるだけ早い段階で買掛(AP)側、つまり受領の部分もONESOURCE Pageroで実現したいと考えています。これは私自身の宿題のようなものですが、以前からドイツ拠点より、デジタル会計と税務関連データのガイドライン 「GoBD」への対応について相談を受けていました。GoBDは日本の電子帳簿保存法に近い制度で、2025年4月頃から本格対応が必須となりました。取引に関わるPDFデータなどを適切に保存する必要がありますが、これまではSAPでの対応を模索してもコストやツールの面で良い解決策が見つかりませんでした。今回トムソン・ロイターさんに相談したところ、ARとAPの両方をONESOURCE Pageroで対応すれば、デジタルインボイスの保管に関し、 GoBDへの対応も可能になると伺い、ドイツ拠点の業務効率化を一気に進められると期待しています。
―ドイツ以外の拠点への展開も視野に入っているのでしょうか。
原田氏:まずはマレーシアです。既に現地システムで導入済みですが、ベンダー対応が芳しくなく、いまだに手作業でのデータアップロードが残っているため、ONESOURCE Pageroへの入れ替えを検討しています。来期以降に制度導入が見込まれるフィリピンやシンガポールについても相談を受けており、ONESOURCE Pageroを活用した展開を考えています。ベトナムも既に導入済みですが、将来的には統一の対象になっていくと思います。現在導入を進めているのはSAPが入る商社拠点が中心ですが、フランスやインドネシア、タイなど製造拠点も数多く抱えているため、そちらへの展開でトータルのメリットをさらに広げていきたいところです。各国の通関や税務申請をExcelから手作業でアップロードしているという声もよく耳にします。SAPにデータがあるにもかかわらず、拠点ごとに無理やり加工している現状があり、こうした業務の効率化・自動化についても、トムソン・ロイターさんへの期待は大きいです。
下山氏:ドイツでの経験は、今後シンガポールやマレーシア、フィリピンへ展開していくうえで大きな財産になると考えています。トムソン・ロイターさん側にも稲畑産業のビジネスケースとしての知見が蓄積されていくはずですので、この経験を土台に、他拠点でもスムーズな導入が進むことを期待しています。
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